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Aside
「好きです、付き合って……くれませんか」
折原さんは、そう言った。
折原さんが、私を好き……?
信じられなくて、思わずぱちぱちと瞬きをしてしまう。
そんな、そんなことあるわけがない。
でもその瞳は真剣で、冗談ではないというのはひと目でわかる。
そんな夢みたいに素敵で、現実的じゃないことが、あっていいの?
折原さんは、数十万人もフォロワーがいて、ミリオンを突破した曲もあって、深夜のツイキャスでも5000人くらい集まって……私なんかには釣り合わないくらいすごい人なんだよ。センラさんなんだよ。
その真剣な眼差しが痛くて、思わず目を伏せてしまう。
私は折原さんが好き。それは紛れもない事実。
でも、私が折原さんと釣り合うかどうかなんて、わからない。
いや、わからないじゃない。釣り合うわけがないの。
折原さんはキラキラしたアイドルで、私はただの社会人。住む世界が違う。
そんな人に告白してもらえるなんて、こんなに大好きな人に告白してもらえるなんて、もう二度とないかもしれない。
でも、私と付き合うのはセンラさんにとって、これっぽっちもいいことじゃない。センラさんにメリットなんて、ひとつもない。
ゆっくりと目を開き、折原さんとしっかりと目を合わせる。
そして、彼女は振り絞るように声を出した。
「ごめん、なさいっ………」
そう口にした瞬間に折原さんの表情は悲しそうに歪む。
こんな顔をさせたのも私なんだ、と考えると胸がひどく痛んだ。
「やっぱ、坂田には勝てへんね」
折原さんは自嘲気味に笑った。
そのタイミングで店員さんが2つグラスを持ってきてくれて、それぞれの前に置いてくれる。
軽く会釈をしたあとに彼の顔を見ると、変わらずどこか諦めがついたように微笑んでいた。
「違う、そうじゃないんです」
「……なんも違くないやろ」
「そうじゃなくて」
「慰めの言葉はいらんから」
「違うんです!」
思わず大きな声を出してしまい、少し離れたところにいたお客さん達が一斉にこちらを見た。
周囲からの目線が痛いほど突き刺さってくるけれど、そんなの気にしてる場合じゃない。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時