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[センラside]
「あ、の……折原さんの誕生日って、いつですか?」
俺からの視線に耐えられなくなったのか、Aは突然こう言った。
その姿は申し訳なさそうで、そしてどこか怯えているように見える。
なんで誕生日なんて聞くんやろ。
あ、もしかして祝ってくれるつもりなんかな?
よかった、今年の誕生日はまだやん…!!
普段は誕生日なんて気にしないくせに、当日になっても大して喜びもしないくせに、今回だけはどうしても心が舞い上がった。
「10月3日やで〜」
「う、そ……」
上機嫌に答えた俺とは正反対に、Aは大きく目を見開いた。
綺麗な瞳が、震えている。
「えっ、何?10月3日やったらあかんかった?」
「えっと、その、私のペットが死んでしまった日なんです。そ、それで………せっかくのお誕生日なのにすみません」
Aは顔を隠すように下を向いた。
彼女のペットのことなんて微塵も知らない。
それなのに、何故か今の発言が嘘だということは確信を持てた。
根拠なんて一つもないけれど、今のAは嘘をついていた。
なんで?そんなに俺に言えへんことなん?
「も、もうひとつ聞いてもいいですか」
Aは下を向いたまま、震える声でそう言った。
特に断る理由もないので、「いいよ」と返事をする。
「折原さんって……きゅうり苦手だったりします?」
「え、あ、うん……苦手、かな」
きゅうりが苦手?
そんなことを質問してどうするつもりなんだ。
嫌いな食べ物を聞く、ならまだしもきゅうりってドンピシャとか……。
「一体どういう意図で聞いてきたん?」
「特に理由はないです。ただ、聞きたくなって」
そんなわけないやろ。
ただ聞きたくなっただけの質問で、そんな悲しい表情しぃひんって。
あくまで俺には話さへんつもりなんやな…。
その事実に胸が針で刺されたようにチクチクと痛んだが、これ以上聞いても迷惑なだけなので、仕事に戻った。
距離が近づいたなんて思ってたのは、俺だけやったんかな。
それとも、知らないうちに何かしてしもたんやろか。
怖い、今度は失いたくないのに。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時