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Aside
まず初めに坂田さんのソロ曲でも特に大好きな1曲を歌った。
もちろん彼みたいにかっこよく、魅力的に歌うことはできないけれど、同じ歌を歌えてるってだけでちょっと嬉しい。
時々折原さんの方を盗み見ると、少しだけ複雑そうな表情をしながらも楽しそうに画面の方を見ていた。
続いて折原さんがボカロ曲を歌う。
歌枠で歌っていた曲だったから、聞き覚えがあった。
音楽がかかると共にいつもスマホやCDプレイヤーから聞こえてくる声と全く同じ声が聞こえてきて。
すごいな、私の身の程に合わない、素敵な時間だ。
坂田家なのに、という罪悪感と好きな人と一緒にカラオケにきている、という事実への幸福感が胸の中で混ざり合う。
こんなことで悩めるのもきっと、随分贅沢なことなんだろう。
「何か一緒に歌うー?うらさかが歌ってるやつとか」
「いいんですか?」
「もちろん」
優しくはにかんだ折原さんを見て、明日死ぬのかな、なんて思った。
どうしよう、センラさんにリクエストを聞いてもらえる機会なんて、二度とないよ。
無意識のうちに自分が歌いたい曲よりも、折原さんに歌って欲しい曲を探していた。
ふと、有名なボカロ曲が目に止まる。
色っぽくて、まるで甘い蜜のようにとろける禁断の曲。
これ、歌ってくれるかな。
「magnetとか……ダメ、ですかね」
……何リクエストしてんの、さすがに過激すぎない?
折原さんもこれは嫌だって。
「こういうの好きなん?」
「え」
10cmあるかないかの至近距離で、折原さんの瞳に囚われる。
妖艶な色気たっぷりの声に、ドクン、と心臓が大きく脈打った。
「……結構、好き、です」
「そうなんや、じゃあ歌お〜」
すぐに離れた折原さんはいつも通りの声なのに、顔に熱が集まっていく。
ちょっと調子に乗って色っぽい曲をリクエストした罰……かな。
許してください。
私もうすぐ、折原さんとお別れなんです。
だから最後まで私が抱いてしまった想いには気づかないでください。
このリクエストを……東京の本社に帰る前の、最後のわがままにしますから。
なんてことを考えながら歌ったその曲は、折原さんの吐息混じりの声と自分の上ずった声が釣り合ってなくて、あまりいい点数がとれなかった。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時