【アカギ】神出鬼没の。

最初 ページ32

「…それで、

まず何を聞けばいい？」


タバコ片手に詰め寄る。


「じゃ、じゃあ…まず、手…離してください…」

とにかく恥ずかしさで持たなかった。
アカギさんは無言で手を離す。


「で、次は？」

淡々と続ける。

「え、…えっと…」
いきなり言われても……

「じゃあ……」

私が考えている間にも、アカギさんは私を見つめている。

タバコは短くなり、灰がたまっていた。


「…アカギさんと一緒にいさせてください…！」

何も思いつかなかった結果がこれだ。
最悪、としか言えない。
自分で言って、すぐに恥ずかしくなる。

「…………」

ぽかんと、口を開けるアカギさん。
ぽろりと、タバコの先の灰が落ちる。

「……バカいうな…」
タバコを足で踏みつぶす。


「オレなんかといると……

…とばっちりで火の粉が来ることもあるんだぜ…」

途端、真剣になるアカギさん。
しかし私は構わず続ける。

「…アカギさん、言うこと聞くって言いましたよね」

「…………」
呆れたような顔。

「……ほら、そんな事言ってると早速きたぜ」


悟ったような顔で後ろを振り返る。



「石川さん」

「……アカギ、探したぜ…」

黒ずくめの男。

「…珍しいじゃえねか、女なんて連れて…

取り込み中悪いが…今すぐ来てくれ」


「………クク、仕方ねえ…」

行こうとするアカギさんの腕を掴む。

「待ってください」

「あ？」
「石川さん」と呼ばれる男が驚いたように声を発す。

「…反故にする気ですか、

それなら私も連れてってください」

「バカいってんじゃねえ…っ！」
黒ずくめが一斉にどよめく。


「…聞けませんか。」


「…………


…つくづくおもしれえ……

いいぜ……石川さん、コイツも頼む」


アカギの頼みなら、としぶしぶ引き受けてくれた。


正直、自分でも驚いた。
今まで私はこんなに行動的になったことはない。

何がそうさせているのか…

ただ、アカギさんは掴みどころのない人で、
目を離してしまえばすぐに失いそうな気がして、
今までみたいにのろのろしている暇はなかった。


時計の針は、すでに11時半を回っていた。

車内→←接近

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