出血 ページ30
「あ〜あ……」
自分がこんな体験をするなんて思ってもみなかった。
賑やかな夜道をふらりふらりと歩く。
アクセサリーだらけのチンピラ、居酒屋帰りのサラリーマン、いかがわしいカップル、色とりどりの人間がひしめき合っていた。
道端ではチンピラ同士の喧嘩が始まり、
より騒がしくなる街中。
まだ学生の私がこんな時間に歩いているのが不思議なのだろう、すれ違う人々の視線が身体に刺さる。
「早く帰ろう……」
近道するために、ひとつ通りを抜けると、すぐに静かになる。
あの商店街。
明かりだけが煌々と広い通りを照らしている。
そこで私は足を止めた。
「アカギさん……」
アカギさんと会った場所。
私の運命を変えた場所。
去ろうと一歩踏み出した時、
かすかにタバコのにおいがした。
「……?」
思わず立ち止まり、すぐ隣の通路に目をやる。
「だれ…?」
影が、こちらを向く。
「………やっぱり…
…探してたんだ、アンタのこと」
影は光に照らされて、姿を晒した。
「あ、アカギさん……?
……アカギさん!!!」
アカギさんだった。
会いたかった彼。
けれどアカギさんはいつものアカギさんじゃなく、
こめかみから細く血を流していた。
「ど、どうしたんですかそれ…!!」
思わずコンビニの袋を落とし、アカギさんに駆け寄る。
しかしアカギさんは言動こそいつも通りで、
平気そうにタバコを吸っていた。
「平気さ…これくらい……
慣れっこだ」
「ばっ、馬鹿じゃないですか…!?」
ポケットからハンカチを取り出し、
アカギさんの血を拭き取る。
「…皆、結局金が惜しいんだ
だから一般人から抜け出せない…
クク、土俵がまるで違う……」
こないだみたいな賭け麻雀をしたんだとすぐに分かった。
「麻雀…また…?いったいいくら賭けたんですか…」
「2千万」
アカギさんはあっさり言うが、
あまりに現実味のない金額に、立ち尽くす私。
「…っていうか、そうじゃない…
オレ、アンタに会いたかったんだぜ」
アカギさんはタバコを口から落とすと、
私の腰をぐいと引き寄せた。
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戦犯にわか(プロフ) - ハピネスゾンビさん» 天さんももっと活躍させたいんですよね…!(笑)研修旅行ネタもお楽しみに…!:-)続編もできたのでよろしければどうぞ! (2016年3月30日 11時) (レス) id: 26c8f236c5 (このIDを非表示/違反報告)
ハピネスゾンビ(プロフ) - 戦犯にわかさん» 天さんあかんwwwそしてちらつく研修旅行に既にワクワク...! (2016年3月30日 10時) (レス) id: 8aead49c71 (このIDを非表示/違反報告)
戦犯にわか(プロフ) - ハピネスゾンビさん» ひいい…嬉しいお言葉…!!これからもちょくちょくイラスト載せようと思います…!ひろにはこれから頑張ってもらいますね!もちろんカイジにも…(小声) (2016年3月30日 0時) (レス) id: 26c8f236c5 (このIDを非表示/違反報告)
ハピネスゾンビ(プロフ) - ひろゆきに期待が高まる...。そしてイラスト拝見しました、絵画かと思った...これは想像しやすくてありがたい...!!! (2016年3月30日 0時) (レス) id: 8aead49c71 (このIDを非表示/違反報告)
ハピネスゾンビ(プロフ) - 戦犯にわかさん» ってことは両思いワンチャンですかね?!?!あああもう続きが気になってしょーがない!!戦犯さんとこの小説に感謝です... (2016年3月29日 12時) (レス) id: 8aead49c71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:戦犯にわか | 作成日時:2016年3月24日 3時