先輩の、となり。２

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先輩と初めてデートする日は、すごくいい天気だった。

何着ていくかすごく迷ったけど、遊園地だし動きやすい方がいいかな、と思って白いざっくりしたニットの長めのカーディガンにジーンズにコンバースのハイカットのスニーカー。

待ち合わせの駅前の噴水のとこに行くと、先輩はまだ来てなかった。

ちょっと張り切って早く来すぎた、と思いながら、噴水のふちにもたれて立ってると、急に声をかけられた。

「ねえねえ、待ち合わせしてんの？」

知らない男の人二人。

ん？私？

「友達待ってる？俺たちも二人なんだけど、よかったら一緒にどっか行かない？」

は！これは！いわゆるナンパというやつでは。


「人の彼女に勝手に話しかけないでくれる？」

冷たい声が聞こえて振り向くと、先輩が明らかに苛立った顔で立ってる。

「彼氏待ってんならそう言えよ」って言いながら二人組はささーっとどこかへ行ってしまった。


先輩がぶすっとした顔で、私の手を握って歩き出す。

「何ナンパされてんの」

「あ、やっぱそうだったんだ。あれがナンパ」

「もっとちゃんと嫌そうにしないと連れてかれちゃうよ？」

「はは、ついて行かないですよ。先輩待ってるのに」

先輩が私をちらり、と見る。

「そんなかわいいカッコしてるから」

「え。だって先輩とデートだから何着てくか悩んだのに」

「いや、まあ、それは嬉しい。けど。
今度からもっとばしっと断ってよ」

「…はい」

よし、じゃあ気を取り直して行こう、って切符を買うといつもとは違う路線の電車に乗る。

玉森先輩と電車に乗るのなんだか新鮮。

「……ちょっと意外でした」

「何が？」

「こんなこと言ったらまた先輩怒るかもだけど。
けっこう先輩すぐ怒ったり拗ねたりするんですね」

先輩があごに手を当てて、何か考えてる。

「……確かに」

「私は嬉しいですけど。いろんな先輩が見られて。
ちゃんと好きでいてくれてるんだなあって思うし」

「あんまりそんなことなかったかも、今まで」

「そうなんですか？」

「うん。何考えてんのかわかんない、とか、よく言われたし。
もうちょっと余裕あった気がする」

先輩がちょっと意地悪そうな顔で私を見下ろす。

「Aちゃんのせいだよ」

「え？」

「責任とってね」

責任とは。

「ど、どうすれば」

「知らなーい。自分で考えて」

怒ってるのかな、と思ったけど。

見上げた先輩は窓から流れる景色見ながら、おかしそうに笑ってた。

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