先輩の、となり。２

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公園に着くと、ベンチに太輔が座ってた。

「太輔」

私が呼ぶと、振り向いて、おう、って笑う。

「座れば？」

隣に座って前を見ると、昔はピカピカだったジャングルジムや滑り台がだいぶ錆びついてる。

「懐かしいね、ここ」

「うん、よく遊んだよな。飽きもせず、毎日毎日」

「喧嘩もしたけどね」
「お前頑固だからな」
「お互いさまだよ」


「……で？話って何？」

私は太輔に向き直る。

「太輔、あのね。
今日。玉森先輩に好きって言われた」

太輔は前を向いてた。

「そっか」

「……うん」

「付き合うの？」

私が頷くと、太輔はもう一度、そっか、って言った。

「単純にさ、すごいと思う。
だってAが好きだって言い続けたから、だもんな」

「そう…なのかな」

「俺もそうすれば良かったのかもな」

わかんないけど、ってちょっと目を伏せて笑う。

どこかのスピーカーから、夕焼け小焼けの音楽が流れてる。


うーん、て伸びをして太輔が立ち上がった。

「俺の長ーい初恋もそろそろ終わらせるわ」

ごめんね、って言うのも何か違う気がして、私は黙ってた。

「明日からも幼なじみとして、マネージャーとして、よろしく」

「もちろん！」

私が勢いよく立ち上がると、太輔が笑ってた。

「ん。じゃあな」

「帰らないの？」

「もうちょっと思い出にひたってから帰る」

「……肩、冷やさないでね」



そんなことがあったので、先輩のラインと着信に気づいたのは家に着いてからだった。

『今日一緒に帰ろ』
『おーい、Aちゃん？』
『今どこ？もう家？』

時間を見ると、1時間くらい前。

慌てて電話をかけるとワンコールで出た。

「も、もしもし。全然スマホ見てなくてごめんなさい」

「……Aちゃん部活ない日珍しいから一緒に帰りたかったのになあ」

怒ってる。

というか拗ねてる。

「…何笑ってんの」

「あ、ごめんなさい。今度部活ない日は絶対一緒に帰ります」

「約束だよ。もう家？」

「はい、今帰ってきました」

「遅くない？寄り道してたの？」

「……太輔に、先輩と付き合うことになったって話してました」

「…そっか。大丈夫だった？」

「……たぶん。大丈夫です」

それから、今日の文化祭のこととか何でもない会話をして電話を切った。

そうかあ、用事がなくても、先輩と一緒に帰っていいんだ。

先輩の笑った顔がとなりで見られるんだ、な。

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