アイツの背中 １２

１０７ ページ31

「意外。
意外過ぎ。
新聞配達もだけど」

「なんでそれ知ってるん？」

「お母さんに聞いたの」

「もお。
何でも勝手に喋るからな。
最悪やん・・・」


忠義、拗ねちゃった。


「ドラムは今どこにあるの？」

「大阪の実家。
閉じ込められた蔵の中やで」

大阪の実家にはまだ、
一回しか行った事ないんだ。

「ねえ、今度、大阪の実家に寄ったら、
ドラム、聞かせてね」

「それはええけど。
なんかA、わくわくしてるな」

「そりゃあそうだよ。
まだいっぱい知らない事、あるんだなあって。
これからはずっと・・・」

言いかけた私に。

「一緒の思い出やもんな？」

忠義が続きを言って、
抱きしめてくれた。



披露宴で疲れ果てて。

シャワー浴びて着替えたら、すぐに眠っちゃった。


忠義の体温感じてると、
いつもよりも深く眠れる。

てことは。


毎日、これからは深い眠りが約束されてるんだ・・・









朝一番に。


役所に婚姻届を二人で出しに行く。


「おめでとうございます」

担当の窓口の人が、
淡々と処理してくれて、
たったの数分で届けは受理された。


道のりは長かったけど、

いろいろ回り道もしたけど。



大倉Aになれた。



自動ドア出てすぐに。


「やっと、俺の奥さんや」


忠義が少しはしゃいだ声で言う。


「うん・・・
なんか照れる。
これから、
大倉さんて呼ばれるの」

１０８→←１０６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す