アイツの背中

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「オークラ、前にカードで払ってもらってた、
洋服代、いくらだったの？
ボーナス払いなんでしょ？」


背中に聞いたのに、軽く無視。


運転してるとこ、妙にかっこいい。


集中してて、聞こえてないのかも。


信号待ちでもう一度聞いてみる。


「ねぇ、洋服代、いくらだったの？」


オークラが振り返らないままで、


「ええわ。
俺が勝手に買うてんから。
そんなんまだ覚えててんや」


あっさり言う。


オークラにとっては大した金額じゃないのかもしれないけど。


「そういうわけには」


言いかけた私の声は、


「なあ海斗、どっか行きたいとこある？
たあ君がどこでも連れてったるで」


明るいオークラの声でかき消された。


たあ君だって。


ちょっと、可愛いじゃん。


こんなオークラを見れるなんて、
海斗のおかげだ。


「海斗、動物園行く」


海斗が勝手に答えてる。


「じゃあ、動物園で決まりやな」


オークラがもうナビに入れてる。




窓の外のお天気も良いし、
カーラジオから流れてくるのは、
疾走感ある夏のナンバー。


開放感たっぷりで、
おのずと気持ちも上がってくる。


夏の夕暮れ、
子連れで動物園っていうのも、オツかななんて。





平日だし、ガラガラの園内。


「海斗はどの動物が一番好きなん？」


オークラに聞かれて、


「おっかみさん、
それと、きりんちゃん」

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