アイツの背中

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同期入社の私とオークラ。


新入社員の頃は肩を並べて研修受けてたのに、
今じゃ立場が月とスッポン？


ちょっと違うか。


オークラはうちの会社の親会社の社長のボンボンなんだ。


下積みで子会社の住宅メーカーの部長やってるわけ。


私はというと、
生活の全てを仕事に捧げてると言っても過言ではないのに、いまだ主任どまり。


「遅れんなよ」


ぎって怖い顔して睨んで、
事務所を出てくスーツの背中。


なんなんだ、あのえらっそうな態度は。


納得いかないというか、
はっきり言えば、むかつく。


仕事で見返してやりたいけど、
あいつの方が何万倍もなんでも出来るから。


余計に悔しい。

歯ぎしりしたい気分。



大慌てで図面引き直して、
会社の入ってるビルを出たら、
目の前に社用車が横付けされてた。


今から向かうのは、
うちの会社始まって以来の大きな物件のクライアント。


郊外に新しいショッピングモールが建つんだけど、なんとそこの設計をうちの会社に任されたんだ。


いつもは個人宅の設計ばかりだから、
オークラも相当気合が入ってる。


今日は、そこの女社長さんとの最終打ち合わせ。

服装、大丈夫かな。

メイク、直す暇がなかった。


あの女社長、いつも完璧ないでたちなんだよね。


社用車の助手席に乗った瞬間。


「お前、口紅ぐらいつけろや」


オークラにやっぱ指摘された。

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