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「聞いてくれ伊作!今朝、食堂で留三郎たちがさぁ」
「あはは、また留三郎の話しかい?」
僕の隣にちょこんと座り、口を尖らせている女の子。彼女はいつも留三郎や文次郎と喧嘩をしたら僕の所へやって来る。
実を言うと僕は彼女に絶賛片想い中だ。
だから自分にだけこうやって出来事を話してくれるのは嬉しい。
けど、その反面。
彼女が色んな人と関わりを持っているという事を再認識するので少し胸がズキズキする。
それに彼女はタチが悪い。
天然なのかわからないが、不意に顔を近づけたきたり、思った事をすぐ口にしたり…。
昨日はいきなり「伊作って綺麗な顔してるな!」なんて笑顔で言われたからたまったもんじゃない。
もう少し女の子としての自覚をしてほしいぐらいだ。
「はぁ…本当、嫌になるよ…」
「っすまない伊作…!留三郎と伊作は同室だったな。ちょっと留三郎の文句言い過ぎた…」
「ああっ、違うよA!別にそういう訳じゃあ無くて…」
キョトン、と「違うのか?」と言う彼女がまた可愛らしくて、つい笑ってしまう。
たまに幼くなる表情は良いんだけどなぁ…。
本当あと少しだけ、女の子らしくなれば…。
僕が喋らない事を焦ったのか、Aはすぐ側に置いてあった団子を「はい!」と僕の口元へ運んできた。
「A?どうしたの?というか団子あったんだ…」
「団子は長次が分けてくれたんだ!だから伊作にあげるぞ!」
「ええっ?!」
驚いた。本当に驚いた。
なんせ彼女は食いしん坊で大好物は団子だ。
それなのにその団子を僕にくれるなんて。
…考えただけで何故だか心が暖かくなってきた。
「っあ、ありがとうA」
「うんうん!やっぱり伊作には笑顔が似合うぞ!」
キュン…
って僕がキュンとしてどうする!
ああ…彼女は本当に僕の気持ちに気付いてくれるのだろうか…?
「先が長いなぁ…」
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作者名:ひいろ | 作成日時:2017年3月29日 8時