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「あ、定期忘れた。」

「え?」



小瀧君とゆっくり話しながら歩き、ようやく駅に着いたという時に気づいた。


ポケットから出しておいた定期をテーブルの上に置いたままにしてお店を出てしまったことに。



「ごめん、小瀧君先帰ってて。」


「え、なんでやねん。俺も行きますよ!」


「そ、そんな、悪いって!」


「いや。もう暗いし、危ないっす。行きましょ!」



あぁ、また彼を巻き込んでしまった。


彼は本当に尽くしてくれるから、その優しさで心が痛い。





お祭りで騒がしい人混みに再び飛び込む。


反対方向に進んでいく波に乗れなくて、何度も後ろに流されそうになる私に気づいて小瀧君はそっと手を握った。


今だけやから、とこちらを見ずにそう言う彼。


彼の気持ちを受け止められない私は本来この手を受け入れるべきではないのに、そう言われると振り切れない自分に少し、嫌気がさす。



完全にオレンジが群青に染まりきったころ、どこかでもうすぐ花火が上がるねって声が聞こえた。


花火。


あの日、大毅君と見るはずだったのにな。



また懐かしいことを思い出す。


いつまで経っても、彼のことならどんな細かいことも鮮明に思い返せる私。


自分でもすごいな、なんて。






喫茶店が見えてきた。


小瀧君がパッと手を離したのを感じて、すぐ前に駆け出す。



「ごめんね小瀧君!ありがとう!すぐ帰ってくるから!」




喫茶店のドアの前。


そこに組み込まれた小さいガラスの窓から、中にまだ誰かいるのか確認する。


いつもと違って明かりのついた店内は、別のお店のような雰囲気だった。


そこに並ぶのはいつもと同じテーブルに椅子。

キャンドルを置く台に、飾ってある色とりどりのお花。


カウンター席には大毅君がいて...、




えっ...?


う、そ。




隣には彼女の姿。


二人の影は重なって、


彼の傾いた姿勢が彼女の方へ向いている。





キスを、していた。





ショックと衝撃でその場から足が動かなくなる私。


見たくないのに、目が逸らせなくて。


だんだん乾いた目が水でいっぱいになって、


目の前の光たちは、ぼやけてぐわんぐわん揺れるように見えてくる。




「先輩、どーしたんす、か。っ、」



固まる私を見て不思議に思ったのか、小窓を覗いた小瀧君。


彼も驚いたようだ。

*93→←*91 大毅side



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ゆの(プロフ) - 今日ツイッターでエゴサーチを久しぶりにしてみました。まだ覚えてくれている方や、私の作品の夏が懐かしいと言ってくださっている方を見つけて、とても嬉しかったです。ちゃんと届きました。ありがとうございます。この気持ちがあなたにも届きますように。 (9月25日 17時) (レス) id: c5ec0b2059 (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - これを書いた17の私はもう20歳になりました。あの時書けためちゃくちゃ真っ直ぐな気持ちは今は書けないけれど、今書けるものはきっとあの時の私には書けないもので、これからまた書けなくなるものです。あれから2度目の夏に少しだけ懐かしくなってまた書いてみました。 (9月13日 0時) (レス) id: c5ec0b2059 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 本当に心動かされるお話でした、もう感動感動です (9月12日 19時) (レス) id: 082e554ec7 (このIDを非表示/違反報告)
唯緒 - ほんまにステキなお話でした!ぜひ映画化を…笑笑 (8月30日 19時) (レス) id: 9c8991db31 (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - 皆さま、温かいコメントありがとうございます!!!全部読んでいます!!!!とっても嬉しいです。 (7月28日 11時) (レス) id: c5ec0b2059 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆの | 作成日時:2017年1月2日 23時

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