真っ赤な模様の、狐の半仮面 ページ2
「疲れた。疲れ過ぎて吐きそう。これはあれだよね、完全なるブラックだよね」
彼女が伸びをすると、華奢な躰に不釣り合いな革張りの椅子が軽く軋んだ。
彼女は傍らのスツールに腰掛ける壮年の男に尋ねる。
「ねえ、どう思う広津さん?」
「さあ。私には何とも……」
自身と彼女では立場が違い過ぎる。
それ故に肯定する事も否定する事もせず、彼は苦笑して、その場を見回した。
白い壁。白い床。白い寝台。
黒のマフィアの中にある、何の変哲もない医務室だ。
──目の前に座る、真っ赤な模様の、狐の半仮面の医師を除けば、だが。
「さて、では私はこれで。部下に早く治せと伝えて下さい」
「りょうかーい」
見舞いに来た広津は、深々と頭を下げて医務室を後にした。
彼女も椅子から立ち上がると、医務室の奥のさらに奥、垂れ幕を下げられ寝台にカモフラージュされた空間へと歩く。
最終的に辿り着くのは、“private room”とだけ書かれたシンプルな扉。
しかしその右側には指紋認証がついており、最新のセキュリティが取り入れられているのが確認できる。
鍵が解除される音が響いて、扉が開く。
彼女が白衣の釦を外し、仮面の紐を解くと、チョコレート色の瞳がぱちぱちと瞬きをした。
彼女こそがこの物語の主人公、
「命売ります」の異能者──三島Aである。
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作者名:夕野きする | 作者ホームページ:http://http://commu.nosv.org/p/asubook/
作成日時:2019年2月23日 15時