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「ご馳走様」

「ん、今日食べるの早いんだね。」

「そう?いつもと同じペースで食べたけどなぁ」



そう言って向かい合っていた椅子から立ち上がり、食べ終えた食器類をキッチンへと運ぶ。


たわいない会話と煩い煩悩と格闘しているうちに私も朝ご飯を食べ終わっていた。


こうちゃんと同じように少しの食べ汚れしかついていない皿やスプーンをキッチンへ。



「ねぇA〜」

「どうしたのこうちゃん?」



リビングへ戻ると後ろからがっつりホールド状態。

それほど珍しいことでもないのでそのままにする。



「二度寝しよ?」

「まだ洗濯してないよ。」

「あとで一緒にやるから。」

「お皿洗いは?」

「それも!」



私は知っている。
この雰囲気のこうちゃんはなかなか折れない。



「じゃあ一緒に寝る?」

「うん!」



機嫌良く頷き私の手を握って寝室へと引っ張っていく。

子犬か、忠犬か。私の目には激しく揺れる尻尾が写る。


起きて朝ご飯を食べているうちに二人用のベッドから温もりは消えていて、無機質で冷たいただの布となっていた。



「ねぇA?」

「ん?」



二人で並んで布団に潜る。
始めは距離が近いというだけで慌てたり照れたりしてたけど、慣れたもんだ。とても心地良い。



「落ち着いた?」

「え?何が?」

「何って、Aが。」

「ん〜」



こうちゃんは気づいてるんだろう、何かが変なことに。

言うべきか、言わないべきか。

そんなの決まっている。ここで言わない選択肢を取るほど馬鹿じゃない。

大好きで、信頼してる、大切なこうちゃんに心配をかけたくない。

だからこそ話すべきだ。

でも



「ねぇこうちゃん。」

「なぁに」

「私ね、口下手だから、今思ってる不安とか、伝えようとしてもね百分の一にも満たなくなっちゃうの。」

「うん」

「だからね、途中で上手く言葉に出来ない気持ちが溢れちゃうかもしれない。」

「うん」

「だからさ、話してる間だけでいいから、手、握ってて。」

「分かった。」



私がそう言うとこうちゃんの温かくて大きな手が私の手を握ってくれた。

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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年3月29日 15時

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