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バスの目指す先は目的地、植物園。

Aさんとの折角のデートなのだから、どこに行くかは散々考えた。
ショッピングや映画館、水族館。俺が彼女について知っているのは職業と名前くらいだったので、何を選べばいいのかはさっぱり分からなかった。

ショッピングは正直(俺が)そこまで好きではないし、映画は当たり外れが激しいからダメ。水族館はいいかもしれないが、生憎、改装工事中である。

そこで思いついたのが植物園だった。
過去に一度だけ、何故か季節は冬に、そこに訪れたことはあった。

その植物園はとても広く、温室はもちろん噴水があったり、売店も面白かったことを覚えている。


女性は花が好きだろう、なんて安易な考えでその植物園のインターネットサイトを覗いてみると、どうやら薔薇やツツジが満開らしい。
その植物園の二代名物となっている薔薇とツツジ。レビューの評価も上出来だ。

薔薇、か。そりゃあいい。値段も高くはないし、きっと楽しんでもらえるはず。


季節は春。




バスから降りて入園料を払い、中に入ると、満開のツツジが俺たちを迎えてくれた。

「わぁっ、すごい…」

Aさんは入園料を払おうとしたが、もちろんカッコつけたい俺はそれを制して二人分の入園料を払った。
何せ俺の男心。僕が無理やり誘ったので、なんて適当な言葉でそれを流す。


赤、紫、ピンクに白。赤色のツツジなんて今まで見た事がなかったし、何よりその多さに圧倒される。

「すごい…」

彼女も俺と同じように圧倒されたのか、「すごい」との単語しか呟いていない。かわいいな、なんて思ったり。

Aさんの小さな歩幅に合わせて歩き、ゆっくりと順路をたどる。彼女は鞄から携帯を取り出し、カメラアプリを起動させてパシャパシャと写真を撮った。


弾むような彼女の足取りが素直に嬉しい。

咲いたツツジと同じように、満開の笑顔の彼女の横顔はとても綺麗だ。今までで見た彼女のどんな表情よりも。
とは言ってもまだ、Aさんの事は全然知らないのだけれど。


時刻は14時55分。

どこまでも続くツツジの畑をただ、歩く。声をかける事ができない。
タイミングが、分からない。



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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年3月29日 15時

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