不透明で、不完全な、昼前/ぷち。 ページ12
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私は、彼のことが好き。…多分。
言いきれないのは、何かの呪いに縛られているように感じるから?
付き合って1年ちょっと。
同棲を始めて半年経たないぐらい。
所謂"倦怠期"というものに嵌っているのかもしれないが、
世間でありふれたような表現で、
今の私達の関係を言い表したくなかった。
だから、今はお互いに心の余裕が無いだけって信じている。
私達の間には、壁がある。
私が勇気を出したぐらいじゃ、きっとびくともしない壁。
いつからか完成されていた頑丈な、壁。
その壁を、壊したいのです。
どうか、拒まないで。
今日は、彼が午後からの出勤と聞いて少し胸が高鳴った。
お互いに交わらない職種に就いているため、
家にいる時間が重なるのは久しぶり。
午前は、私が独り占めできるかもしれない。
私の方を、見てくれるかもしれない。
つなぎとめたい。行かないで。
仕事に熱心な彼を好きになった癖に、
彼女という立場にいたら欲張りになってしまった。
こんな自分も、そんな貴方も嫌い。
欠伸をしながらリビングに入ってくる彼を見る。
同棲し始めの時、浮かれて買ったお揃いのパジャマ。リネン生地の、光沢のあるパジャマ。
そのパジャマに身を包まれた彼。洗面所に並べられたお揃いのコップ。一緒に住んでいるという事実。
そういう無機質な物だけが、
あぁ、私達って付き合ってるよね、
と再確認できるものであって。
じゃあ、他に、確認出来る物はある?
そう考え始めれば自然と憂鬱な気持ちになってしまうから、
考えるのをやめる。
いつから、こうなってしまったんだろうか。
お互いにとって楽な関係がいいよね
不満がたまらないようにね
ずっと仲良しでいたいもんね
だから、嫌なことが合ったらちゃんと言おう。
付き合った頃にした都合の良い口約束。
会話をしなかったら不満など生まれないために、表面上は守られている。
私は、ただ守られるための約束をしたかった訳ではない。
それはきっと彼も同じで。
眉間に皺を寄せた彼を見つめる。
そのまま思考停止していたが、
ふと、冷蔵庫に冷やしてあるスモアを思い出す。
どうせ一緒に食べられないことも分かっていたのだが、甘いものが好きな彼のために買っておいたのだ。
何か、話すきっかけになれば。
そんな期待をこめてしまったことから目を背けてはいけない。
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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月29日 15時