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「うわ、人多いね」

今日は2日後に迫った旅行のために必要なものを2人で買い物をしに行くことにした。彼も俺も人混みが苦手なため混み合う店内を見てため息をついた。「最終セール」の名のもとに店内すべての商品が安く売り出されており、貯金をする必要のなくなった人達が群がっていた


「人がゴミのようだ…」
「そんな事言わないの、さっさと買って帰ろっか」
「うむ。そうしてくれ…」


本当にうんざりした顔の彼を見るのは新鮮で少し笑ってしまう。そんなところも可愛いと思ってしまうのは恋の魔法とやらなのだろうか


一通りの買い物を済ませて、8階にあるカフェで一休みしていると、リスナーに声をかけられてしまった


「え、福良さんと河村さんですよね!?動画いつも見てます!!」
「ああ、ありがとう」
「お2人はプライベートでも仲良いんですね!」


そうか、彼と俺は傍から見ればただの「仲のいい友達」にしか見えないのかと、胸がちくりと傷んだ


「そうなんですよ。福良は自慢の僕の恋人です」


女の子が目を丸くしたのと、俺が叫んだのが同時だった


「ええ!?!?それ言って大丈夫!?!?」
「別に、もうメンバーに迷惑かかる訳でもないしいいだろう」
「それはそうなんだけど…」


やり取りを聞いていた女の子は少し笑って、


「素敵な関係ですね、これからも応援してます」


そう言って笑顔で去っていった


「河村は急になんでまたあんなこと言い出したの?」
「ん?嫌だった?」
「嫌…では無いけど…」
「そうだなあ、」


彼は少し笑って言った


「可愛い恋人が悲しそうな顔をしてたもんで、つい」


ああ、全部彼にはお見通しだったんだ。立場上関係を公言できないことにこの期に及んで俺が苦しんでいたこと、彼は何も言わなくても分かってくれていた


「河村に嘘はつけないなあ」


そして、いとも簡単に俺を救って、楽にしてくれる。長年の悩みだったはずなのに、彼の一言で俺は悩んでいた事の苦しさなんて忘れてしまう


「その、ありがとうね、」
「まあ、恋人ですから」


少し照れくさそうに笑う彼と、もう人の目も気にせず手を繋いだ

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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時

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