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ページ30

「あと、30分」
「実感湧かないなあ。痛くはないらしいし」
「…あ、花火」


地球最後の日、花火職人が地球を出発する前に最後の一仕事ということで作った花火が打ち上げられる、とニュースで報道された通りに色とりどりの花火が空を飾る


「…河村、俺幸せだったよ。短い間だったけど、一緒にいられてよかった」
「僕も、福良さんと居られてよかった。幸せを沢山貰った。本当に感謝してる」


窓の外ではこれでもかと言うくらい綺麗な花火が彼を照らし、光っては消えていく。数十発が一気に打ち上げられたのを最後に、後には静寂が残った。部屋の明かりをつける気にもならずに2人並んで手を繋ぐ。二人の愛の証である指輪が月明かりに照らされて鈍く光った


「…俺、生まれ変わっても河村の事見つけるから」
「地球は無くなるけどね」
「火星でも、金星でも、どこでもいいよ。どこかに河村が居るなら、どれだけ時間がかかっても見つけ出すから。待ってて」
「ほんとに福良さん狡いなあ…」


彼は静かに涙を流していた。涙を拭う代わりに口付けをする。彼も、俺もこんなにも温かいのに、あともう少しで宇宙の塵となってしまうなんてどうしても考えられなくて、強く彼を抱きしめる。もう言葉は必要無かった。互いが互いを愛しているという事実が僕らをこの世界に繋ぎ止めていた


真っ暗だった空が急に白く光り、二人の身を包む。抗えないほどの圧力を体に感じながら必死に彼の方を向く



「 待ってる 」



彼の言葉はもう耳に届かないけれど、口元がそう動くのを確認して俺はゆっくりと目を閉じた


頭が良くて、優しくて、一途で、意外と泣き虫で、意地っ張りですぐ拗ねる。構わないとすぐに死にかけるし、変なトラブルに巻き込まれやすい。俺が落ち込んでいる時に彼だけが気づいてくれるし、彼が落ち込んでいるのは俺だけが気づくことが出来た


いい関係だったよな、河村


恋人になった日に彼がしてくれた甘いキスも、初めて一緒に寝た日の夜のことも、もうその思い出が更新されることは無いけれどありありと思い出すことが出来る


貴方がいたから世界はとても美しかった


世界は残酷にも終わりを告げる。意識が途切れる寸前に彼の声が聞こえた、気がした

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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時

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