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「バレンタインチョコを作って欲しい!」
これまた突然の提案だった。あと数日後に迫るバレンタインの存在を、この騒ぎのせいですっかり忘れていた
「いいけど、俺料理出来ないよ?」
「それでこそ意義がある」
「えぇ…」
正直料理は死ぬほど苦手だ。本に載っている通りに調理しても外的要因のせいで火のとおり具合だとか膨らみ具合だとかその他諸々が変化してしまうせいで何故か毎回上手くいかない
「じゃあさ、交換にしようよ」
「ほう、それならやってくれる?」
「それならいいよ。俺も河村の食べたい」
「僕を食べるなんて…福良さん卑猥ですよ?」
「河村。耳鼻科と精神科」
「冗談じゃないですか〜」
嬉しそうに笑う彼を見ているとなんだかやる気が湧いてきたので早速買い出しに行く事にする。お互い作るものは内緒のため、別々に買い物に出かけた
「うおー、結構買ったなあ」
2時間後、俺は1人でスーパーから帰ってきた。彼と一緒じゃない買い物は久しぶりで少し寂しかったが、帰ったら彼がいると思うと平気な気がした
「…すっかり染められてるなあ」
気づいたら俺の世界は彼を中心に回っていた。これまで他人が自分のテリトリーに入ることを執拗に拒んできた自分にとって、今の自分の状況は驚愕とも言える
「それにしても河村遅いなあ、どこまで行ってんだろ」
外でカラスが何羽かバサバサ、と飛び去るのが見えた。もう夕暮れだ
電話のコール音が鳴った。知っている番号だった。だってそれは彼の番号だったから
取ろうとした瞬間、じとりと嫌な汗が身を包んだ。嫌な予感がした。何も無いはずだ。この電話に出れば解決するはずだ、と通話ボタンを押す
「ーーーーーーーーーー」
「……………………え?」
電話口からは、彼と似ても似つかない、知らない声がした
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時