10メートル ページ10
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バカ。バカ。バカ。
「木兎の馬鹿……!」
6時間目開始まで、あと4分。
アイツの後ろになんて、とてもいられそうにない。
教室を出て、昇降口からふらりと抜け出して、自販機の近くのベンチに腰掛けた。
5時間目は乗り切った。
うっすらと汗ばんだワイシャツ越しの大きな背が揺れる度、視線を青空へ逃して。
授業が終わって、真っ白なままのノートを閉じて、泣きたくなった理由には知らないふりをした。
――なぁ、俺じゃダメ?
ダメなわけ、ないじゃない。
――俺はAに、そんな悲しそうな顔させねぇ!
じゃあ、なんでよ。
なんで期待させるの。
期待していいなら、なんで言ってくれないの。
単細胞のくせに、なんであんなコドモじゃない顔するの。
「……ばか」
いい加減にしてよ。
月はまだ綺麗なのに。
貴方が死んでくれそうな素振りを見せるだけで、死んでくれないと思っていたときより痛い。
木兎、私は貴方の存在が、痛い。
時計が、6時間目の始業時間を指す。
誰もいない自販機前で、私は目を閉じる。
もし、本当に木兎が私を好きだったら。
夢のような話だ。
好きじゃなかったら。
そうだよね、ありがとう。って。
心の底から、言えるだろうか。
私の好きな人にも、愛を叫びたい人がいるよ。
でもそれだけじゃ、伝わらなかった。
期待が、ある。
きっと大きくなっていく。
外れたら、それは今の私にとって何より辛い。
大きくなれば、なってしまうほど。
やっぱり私は卑怯だろうか。
ポケットから携帯を取り出して、メッセージアプリを起動する。
木兎とのトーク画面は馬鹿話で埋め尽くされていて、真面目に何かを話した形跡なんてない。
クラスのこと、部活のこと、それから、世界の中心のこと。
結局答えは出ないまま。
『今日の部活後、学校近くの図書館で待ってます』
ポン、と送信ボタンを押す。
今日、確かめさせてください。
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ティラミルク(プロフ) - おこめさん» 返信が遅くなり申し訳ありません。夏目漱石のこころ、いいですよね(*'▽')読破済みの方と出会えてうれしいです!二回も高評価を……何とも嬉しいお言葉!かっこかわいい木兎さんをお届けできたようでなによりです。コメントありがとうございました。 (2020年6月26日 23時) (レス) id: 5de232f7c7 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - 本当にいい作品です!!夏目漱石のこころ、私も読んだことあります!!あああああああああもう木兎さんがカッコよすぎます!それでいて可愛いです。つい勢いで1番いい評価2回も押してしまいました笑 (2020年5月19日 9時) (レス) id: 4a878294b2 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 百合郷さん» コメントありがとうございます(*^^*)こんなにお褒め頂けるなんて恐縮です!少し先の話になってしまいますが、そのうち番外編を追加する予定なので、よろしければその時も見て頂けると嬉しいです(*'▽')木兎さんのキャラがつかめていたようで良かったです(笑) (2019年12月16日 18時) (レス) id: edef360b1e (このIDを非表示/違反報告)
百合郷(プロフ) - 完結、お疲れ様でした!遅ればせながらも、最終話まで拝読させていただきました。題名と内容がとても考えられたもので、木兎さんの台詞が本当にそれっぽいなぁと、楽しませてもらいました。素敵な作品をありがとうございました! (2019年12月15日 23時) (レス) id: 5fdd484f6d (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 優麻さん» かっこいい木兎さんを感じていただけて良かったです!ありがとうございます! (2019年11月20日 22時) (レス) id: 9b0bde0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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