おじさん天使の憂鬱。3

Sweet or Bitter？99 ページ2

Side サトシ


数日前、バレンタインデー当日。
我が家は、チョコレートの山だった。


まつじゅんは、雑誌の撮影で
スタッフさんや、女性モデルから
顔を合わせるたびに受け取って
事務所に届いたファンの子からのチョコを
ダンボールで持ち帰った。

なぜか、俺にも
ちゃんと別に用意してくれるスタッフさんもいて
2人合わせたら、ダンボール、3つ分。


帰ってきたら
まーくんが、体操服を入れる
キルティングのバッグに、めいっぱい。

まーくんは、幼稚園の時から
バレンタインの、人気ぶりが
なかなかなんだよね。


そして、いつもどおりの
小さなバッグ、ひとつで
帰宅したカズ｡

の、後ろから
大きなダンボールを抱えた
ショウくんが入ってきて。

「サトシくん
　車に、あと5つダンボールがあるんだ。
　手伝って！」

え、あと、5つ！？

さすが、国民的アイドルNINO。
これでも、だいぶ事務所に寄付してきたらしい。

「まーくんが喜びそうなやつは
　全部持ち帰りたかったみたいで

　厳選された子たちが、この箱だよ。」

ショウくんが言う通り
国民的アイドルは、なにせ年齢不詳。

カズの見た目から
10代だっていう説も根強くて
そのせいか
チョコレートも
キャラクターものや
デザインがポップなものも、多い。


カズは、チョコレートなんて
そんなに、食べないし。

案の定
カズの持ち帰った、大量のチョコレートを
まーくんは、目をきらっきらにして
見つめていたっけ。

きっと
チョコレートにっていうより

カズくんが、くれた！

っていう。
そっちの方に、喜んでたんだと思うけど。



「どうすんの？おとーさん。」

「..うるさいよ、大埜さん。」

「かわいいじゃん。
　真剣な気持ちだよ。

　カズも、真剣に返したら？」

「おばかにも、ほどがありますよ。
　バレンタインに、父親にチョコ、なんて
　そんな息子
　将来が心配です。

　ショウさん、行くよ。」

憎まれ口を叩きながら
チョコの包みは、さりげなく持ち去った
カズ。

まだ、笑いの余韻から抜け出せない
ショウくんと連れ立って
駐車場に出て行った。


んふふ。


とん、とん、とん

まつじゅんの部屋のドアを、開ける。


「なんか、面白いことになってるよ。
　起きて、起きて。」


面白いこと、のキーワードに
ぴくり。

どうやら、今日は
いつもより、寝起きがいいみたいだ。

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