6mm.

☆.ますい ひろとし。 ページ26

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「久しぶりだね、」






本日この言葉を聞くのは19回目。
ちょっとウンザリ。







「もしかしてマミちゃん？」

「そうそう、Aは変わらないね〜！」

「そんなことないって、老けちゃったよ」

「今日、増井くん来てるんだって」

「へぇ」






ぼんやりと高校時代を思い出していたら、人だかりが出来ていた場所を抜けて背の高い男の人がこっちに近づいてくる。







「久しぶり、A」

「……久しぶりだね、増井くん」








噂をすればなんとやら、
今じゃ日本代表にもなっちゃうすごい人。








「少し外出ない？」

「いいよ」







バルコニーで手すりにもたれかかりながら、
ふと隣を見上げると高校時代を鮮明に思い出した。

そう、私の青春全てが彼だった。







「…なんか凄い人になっちゃったね」

「昔と変わってないよ」

「…そうかな」








私たちは高校3年間ずっと隣にいたけれど、彼の東京への大学進学を機に、連絡も疎遠になり自然消滅という何とも呆気ないカタチで幕を閉じた。








「変わらず元気、みたいで安心した」

「そこだけが取り柄だったからね」

「……何回、Aの元気に救われたかな俺」


「、やめてよ」








今のわたしはきっと上手く笑えていないから、
だから目をそらして月を見上げた。

なんで泣きそうになってんだ、私。

もういい大人なんだぞ、








「ずっと謝りたくて、」

「……」

「Aのこと、大切にできなくてゴメン」

「、私こそ…ごめん」








ずっと好きだったわけじゃない。
今でも好きか？と聞かれれば好きだけど、
昔のような気持ちは残ってない。


なのに、どうしてこんなに苦しいのか、

その理由を私は知らない。








「…野球、頑張って」

「ありがとう、そっちも」

「体には気をつけてね」








握手を交わした左手が少し引っかかって、
虚しい自分の左手がバカバカしくもあった。



さようなら、大好きだったひと。

あなたの明日が晴れでありますように、







〔 想い出はいつも私に語りかける 〕







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