涙で光るガラス (ページ6)

今日:28 hit、昨日:26 hit、合計:109,921 hit

6 ページ6

.

『5分以内に好きなシーグラス見つけて集合ね』

松倉「おっけ！」

そう言って2、3分後にシーグラスを見つけた。

松倉くんを見たら、まだ探してるみたいで

『見つけた？』

松倉「まだ」

『一緒に探そっか』

ふたりでしゃがみこんで砂浜を見つめる。

『こういう小石が多いところだと少し掘るとあったりするよ』

松倉「あ！本当だ！」

『見つかってよかった』

松倉「Aちゃん、これと交換でもいい？」

『もちろん。約束したもん』

お互いの手のひらにシーグラスを乗せる。

松倉「ハート型？」

『可愛いでしょ？』

松倉「うん、可愛い」

私が見つけたのは、ハートの形になった白のシーグラス。

『じゃあ、時間になっちゃったから行くね』

松倉「お仕事頑張って」

『ありがとう。またね、海斗くん』

今日海斗くんと見つけたシーグラスも、ちゃんと保管しなきゃ。

この前交換したシーグラスは、今までのシーグラスとまとめたくなくて、別のクッキーの缶に収納した。

きっとこれから海斗くんに会う度に、どんどん増えていくであろうシーグラス。

楽しみで仕方がないんだ。

.

次に会えたのは1週間後。

ファッション誌を持ってきてくれて、このアイテムが可愛いとか色々と話しながらふたりで読んだ。

雑誌から目を離して海斗くんを見ると、思ったよりも顔が近くて、ふたりで同時に離れる。

松倉「ごめん」

『こちらこそごめんね。』

このカフェは、モーニングの時間だと私と近所のおじいちゃんくらいしかいなくて、そんな中に海斗くんがたまに来てくれる。

でも今日は近所のおじいちゃんもいなくって、なんだか擽ったい。

松倉「…近いの、嫌だった？」

『え？』

松倉「や、なんでもない」

海を見る海斗くんはどこか困ったような顔をしている。

『嫌じゃなかったよ』

松倉「本当？」

『うん。だって海斗くんだから』

松倉「それって…」

何かを言いかけたのに"いや、なんでもない"と口を閉じた。

あのね、海斗くん。

…私、海斗くんのこと好きみたい。

小さい頃よく来てたこの海の近くで暮らしたくて地元の田舎を出て、平日の朝はこの古民家カフェに居座って

知り合いが店主のおじさんしかいない中、海斗くんは私と友達になってくれて

心が温まるような、一緒にいたいと思える人。

きっと、好きなんだ。