涙で光るガラス (ページ39)

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ファッション誌を買う約束をしていたから、本屋でグループとしても個人としても出ていない雑誌を物色して。

これがAちゃんには似合うかな、こういう服も着てみてもらいたいな、そんな理由で選んだ。

雑誌を持ってカフェに行って、ふたりで並んで見ていた時、無意識で顔が近くなっていて

それに気づいて離れたAちゃんは、少し顔が赤い気がする。

近いのが嫌だったか聞いたら"嫌じゃなかったよ。だって海斗くんだから"なんてさ。

俺バカだから、そんなこと言われたら期待するんだけど。

きっとこの子は無意識で周りの男を振り回すタイプ。

…そういうの、意外と嫌いじゃないけど。

Aちゃんのことがもっと知りたくて、今度夜にも会えないか話をして、了承を得て。

次に会えたのは、ゲスト出演が決まっていたドラマの撮影後だった。

気に入っていた金髪から、ドラマと今後の舞台のために黒く染めた。

Aちゃん、ビックリするかな。

『おつかれさま。髪色違うからビックリしちゃった』

松倉「金の方がいいかな？」

『ううん、どっちも似合ってるよ』

案の定驚いた様子だけど、話しながら髪を触ってくるAちゃんは今日も俺を振り回す。

だってほら、また家にお邪魔していいかって話の時に"海斗くんだから"って。

その俺だからって、どういう意味？

俺のことは男として意識していないからってこと？

都心から離れたところとはいえ、ふたり並んで歩くのは職業柄リスクを伴うから、俺だけコンビニに寄ってAちゃんを先にお家に帰らせた。

コンビニでは飲み物とスナック菓子、あとは前あのカフェの店主からもらったいちごチョコが沢山入ったお菓子を買った。

家にお邪魔すると、今日は初めて撮影後に会えたからか、メイクについて突っ込まれて。

アイドルみたい、そう言われて焦る。

…隠さなきゃ、じゃないと気遣い屋さんのAちゃんは俺から離れて行っちゃうかもしれない。

作ってくれたパスタを食べて、お菓子を一緒につまんで、終電に間に合うように帰ろうと玄関のドアを開けると急に雷が鳴る。

それと同時に掴まれた服の裾。

Aちゃんが小さくなって目をギュッと瞑って震えてる。

どうやら雷が怖いみたいで、どうせ外も土砂降りだし、もう少し家に居させてもらうことにした。