* ページ7
*
いつも通りの1日を終え、デスクに広げていた教材などを鞄に入れる。
昨日、戻ってくるなり抱きついてきた彼女は結局そのまま帰った。しかし、今日はいつもとなんら変わりない態度でやって来た。
何も言わないなら、何も訊かない。それが一番平和的判断。争い事に発展してしまったら面倒だ。
でも、少し。ほんの少しだけ、彼女が昨日見せた今まで一度も見たことがない笑みが、気になった。
今更訊いても、遅いと言われ微妙な空気になるだけだが。
やはり、何もせずにいつも通り振る舞うのが正解なんやろうな。
重量の増した鞄を持ち、保健室を出て鍵を締める。あとは鍵を職員室に戻して帰るだけだ。
教師になったはいいが、実のところ俺は生徒───特に女子生徒と話すのが苦手だ。だから、保健室から出るのは最低限にしている。
鼻につく香水。過度なメイク。校則違反の短いスカートに開いた胸元。意味のわからない言葉。
そんなので男が寄り付くと思っているのか。いや、思っているからしているのだろう。本当は離れられるだけなのに。
そして、なぜか女子生徒に人気な俺は保健室から出ると大量の女子生徒に絡まれる。
相原曰く、保健室に彼女らが来ないのは私がいるから…だそう。
なら一日中俺のそばにおって、女避けになってくれたらええのに。なんて思ってしまう俺は重症だ。
なんてぼーっとしながら職員室の前にたどり着いて、やっと気づいた。
誰一人として、女子生徒どころか男子生徒すら話しかけてこない。それどころか、
避けられてる。
嫌な予感が全身に回りきる前に、俺は職員室の扉を開けた。暖房のむわっとした空気と刺すような視線が、俺を迎えた。
「…………坂田先生、お時間いいですか」
校長先生だった。
その声に問いかけはない。全身に巡った嫌な予感は確信に変わり、背中を冷たい汗が伝った。
あ〜あ。
「……はい、」
どうでもいいから、早く家に帰って勉強したいなぁ。
56人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かのこゆり - 今回もとても素敵でした…。設定もストーリーもよく考えられていて、尊敬します!同じ「スクール・ラブ」でも全然違って、読んでいて本当に楽しかったです。作者のみなさん、お疲れさまでした。最高の作品をありがとうございました! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 1f2cd0f1d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ