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2本目を取り出そうとスカートに手を這わせたところで、無機質なチャイムが鳴り響いた。

「あ、授業終わった」
「先生、あのな、」
「…何?」

ふと思った。
こんな短い時間だったけれども、人生で1番男性を相手に楽に話せたかもしれないと。
彼とだって、こんな風に話したことはなかった。
遠慮と愛想の混じった、汚濁した会話。
そんなのじゃない、本音を曝け出すコミュニケーションがこの瞬間の屋上にあった。

「先生、その人とは別れた方がええと思う」
「何でそんなこと言うの、」
「…先生のこと、好きやから?」
「……はぁ?」

ひゅう、と風が吹いて、フェンスの間を颯爽と通り過ぎていった。
余りに呆気ないものだったので気付きにくかったが、これは俗に言う告白というものだろう、と予想はついた。

「私は大人、あなたは子供。私、捕まりたくは無いんだよね」
「…じゃあ、待ってくれる?」
「え?」
「俺が、その煙草一緒に吸えるようになるまで」
「…私、その頃にはおばさんだ」
「言うて二十代やろ」
「まぁ、セーフかな」

これが何の波乱もドキドキも無い、味気ない青春、というやつなんだろうか。

(嘘だ。ドキドキしてる癖に)


「先生、今日夕方、残業とかある?」
「ごめん、今日は無理」
「…残業?」
「ううん、例の塾に行く」
「?」
「お別れしてこないと、さ」

そう言うと、彼は目を輝かせたようにニヤリと笑った。

「あ、そういえば名前なんだっけ」
「えぇ⁈そこから⁈」
「うん。そりゃあ」
「…折原センラ。先生はAちゃんやろ?」
「その呼び方ほんとに辞めてもらうよう言っといて」
「俺は辞めんけど」


こんな恋愛、煙草より味気ない。

けど、大好きなPeaceより、


(ひょっとしたら、甘くなるのかも、)







*fin

【坂田】裏表一体保健室/sera→←*



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かのこゆり - 今回もとても素敵でした…。設定もストーリーもよく考えられていて、尊敬します!同じ「スクール・ラブ」でも全然違って、読んでいて本当に楽しかったです。作者のみなさん、お疲れさまでした。最高の作品をありがとうございました! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 1f2cd0f1d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:参加者一同 x他3人 | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年1月11日 20時

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