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何時もは色気を含んだ声が、今回は少しかすれていてどこか弱々しく聞こえる。
そんな志麻先生が、なんだか可哀想に見えてきて、私は思わず志麻先生の背中に手を伸ばした。
「なに、言ってるんですか。私に、彼氏なんて、いないですよ。いたら今頃、志麻先生を突き飛ばしてますよ」
志麻先生の力が、少しだけ緩んだ気がした。
「志麻先生のこと、嫌いじゃないです。本当は、本当は…好き、です…よ」
今度は、私が力を込める番だった。
怖い、今までの嘘とか言わないよね。
恐る恐る志麻先生を見ようと顔を動かした瞬間、ばっと目を隠された。
「っ、見んな!絶対見たらあかんで!」
「え、え?なんでですかー!」
じたばたもがくと、志麻先生はまるで幼い子供をあやすように、ぽんぽんと背中を優しく叩く。
「はいはい。それじゃあ晴れて俺の彼女さんになったAちゃん、お勉強の続きをしましょうか」
「え」
何ですかそれ。
抗議心たっぷりの目で志麻先生を見ると、先生はまた私の答案用紙をぴらぴらと掲げた。
「今度は恋人のお勉強をしよか〜」
「え?するんですか?今から?」
「当たり前や。放課後の時間は俺…ちゃうかった、彼氏とお勉強〜」
答案用紙を掲げる志麻先生は、ネクタイを緩め、髪をかきあげた。
え、嘘でしょ先生。
「ほら、始めるで」
ラウンド開始という風に帰宅時間を知らせる鐘が学校に鳴り響いた。
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かのこゆり - 今回もとても素敵でした…。設定もストーリーもよく考えられていて、尊敬します!同じ「スクール・ラブ」でも全然違って、読んでいて本当に楽しかったです。作者のみなさん、お疲れさまでした。最高の作品をありがとうございました! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 1f2cd0f1d2 (このIDを非表示/違反報告)
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