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「あ、ごめん。俺ちょっと頭痛くてさ」
「大丈夫?」
「まあ、もう少し寝るよ」
「おっけーじゃあねー」
安定の優しい声。私に向けてじゃない言葉。
吐き気するときとはまた違うモヤモヤ。
「おい、寝てないだろお前」
「は、はひっ」
あ、寝息の演技忘れてた。完璧にバレてる。
「今の話聞いてたよな」
「う、うん」
「…もしかして、妬いてた?なんか顔赤いけど」
�茲を触ると熱い。うらたは「自意識過剰だよなぁ」って笑う。うらたは私に意識されてるって知らない。なんだか私の気持ちを分かって欲しいと思ってしまった。
私こそ自意識過剰かもしれない。
「そうだよ」
「………は?」
「妬いてた」
「…ほんとに頭打ったか」
「私、うらたのこと好きだよ」
うらたは目を見開いて私を見つめる。そんなに驚くことだったのか。冷静そうに見えるけど内心は心臓が飛び出しそうで抑えるのに必死だ。
「ほんとか?」
「もちろん」
「へぇー…」
考え込むうらた。速攻で返事が返ってくるのか。今日気づいたすき、は今日に諦めなければいけないのか。悔しいに近い感情がこの胸を支配した。
「じゃあ、俺をその気にさせてよ」
「ん?上から目線普通に腹立つ」
「付き合うとかはちょっとまだ無理かも」
「あ、うん。知ってました…」
分かっていたことだけど胸が痛い。
「でもまだ、ってことだから」
「…ちょっ…どういうこと…分からん」
「まだ考える時間が欲しいから答えを出す前に俺をその気にさせろってわけ」
「は、はぁ…」
頭が追いつかないけれどとりあえず諦めなくていいってことか。
嬉しいけど複雑な気がしてならないよ…
でも惚れた弱みっていうものだ。この際複雑な気持ちはゴミ箱に捨てておこう。
恋は盲目って言うもんね。壁とかあっても気にしない方がいいや。
「分かった。その間に頑張るから」
「おおーやる気だね」
ニヤニヤするうらた。そうしていられるのも今のうちだ。
うらたを直視するのが恥ずかしくて窓へ視線を移す。1本のみかんの木が私を見つめているような気がした。
この恋を例えるならばきっとオレンジみたいな恋なのかもしれない。
まだ彼女になる希望がある甘い味と、
まだ彼女になれないもどかしさの酸っぱい味。
「頑張り姫、やってみなよ?」
風が吹いた。オレンジの香りが窓の外からする。この香りの正体は私の恋の味。
このすき、が
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かのこゆり - 今回もとても素敵でした…。設定もストーリーもよく考えられていて、尊敬します!同じ「スクール・ラブ」でも全然違って、読んでいて本当に楽しかったです。作者のみなさん、お疲れさまでした。最高の作品をありがとうございました! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 1f2cd0f1d2 (このIDを非表示/違反報告)
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