初音;03 ページ4
エースとマルコはまたあの子がいるであろうベンチにいた。いや、正確には待っていた。
船は今晩には、出発する。その前にどうしてもあの子に会いたかった。
「今日は来ないんじゃないかよい」
「いや、絶対来るさ」
しばらくして、とぼとぼと歩いてくる子供が1人。
あの特徴的な銀髪は―――――――
「……あ、お兄さんだ!」
笑顔であの子は近づいてくる。
子供の顔は赤く腫れ上がっていた。殴られたのだろう唇から血が滲む。
それを見てマルコとエースが目を見開く。
「……お前、その顔、どうしたんだよい」
「あー、かあさまを怒らせちゃったの…。へへ、でも、大丈夫」
「大丈夫なわけねぇだろ」
エースが子供をじっと見つめる。
「…お前、名前は?」
「A!お兄さんは?」
マルコとエースが名を名乗るとAは嬉しそうに名を呼ぶ。
「マルコにエース!覚えたよ!」
「A、今日は手当てしてやろうと思ってよい」
マルコの言葉にAは困った顔をする。
「…手当ては、大丈夫だよ。かあさまに、勝手に手当てしたらおこられちゃうし。こんなの、平気!だから、」
「強がりはやめようぜ、A」
エースがはっきりとそう言った。
「ちが、僕…強がって、ない」
「じゃぁ、それ、誰にやられたんだ?」
「………かあ、さま。…っ、でもっ、かあさまは悪くないよ!だって……だって、」
Aが唇を噛み締めた。
まるで何かを我慢するみたいに。
「…僕が、悪い、子だから」
ぽたぽたと地面にシミができる。
「……かあさま…、僕、頑張った、よ。かあさまに、褒めて、ほしくて…お勉強も、バイオリンも、だから、」
マルコがぐいっとAの手を引っ張った。軽々とAはマルコの胸元に収まってしまう。
「…まる、こ」
「…よく頑張ったよい。だから、もう、いい。もういいんだよい」
マルコがAの頭を撫でる。
「A、俺たちと一緒に来い」
エースがそう言った。
94人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉うさぎ(プロフ) - なまらさん» コメントありがとうございます!夢主の能力が使われるのはもう少し先になりそうです……(´TωT`)気長に待っていただけると作者は嬉しいです (2021年11月22日 11時) (レス) id: 2678198c2d (このIDを非表示/違反報告)
なまら - 更新されてるか見るのが毎日の楽しみです!!夢主ちゃんの能力使われるのが楽しみです!更新頑張ってください!! (2021年11月21日 4時) (レス) id: 26945b0253 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉うさぎ | 作成日時:2021年10月3日 12時