ぱぱのむすめがいい【桃】

story59 ページ20

さとみside

さ「A、荷物もったか？」
『うん、はんかちとてぃっしゅとうさぎさん』
さ「よし、行くか」


つぐみは、丸一日九条さんといて何を思うのだろう
どうしたいと思うのだろう


さ「つぐみ、パパとの約束覚えてるか？」
『おじさん、じゃなくてくじょーさん』
さ「そう……覚えてて偉い」


チャイルドシートにつぐみを乗せて車を走らせる


『つぐみね、くじょーさんのことね、いやだったの』
さ「え？」


今、うちの娘さらっととんでもないこと言ったよ？
本当に5歳？


『ままのこと、おいてっちゃったのひとだから』
さ「そっか」
『しらないのひとなのに、おこってたの』


正直、うちの温厚な娘が怒る姿など全く想像できないけど
子供なりに、自分が大好きな母親のことをないがしろにされたと感じてたのか

前々から感じていたけど、つぐみは5歳にしては
思慮深いし、感情が豊かで、理性的すぎる

だから、はなちゃんが死んだ時も泣けなかった

約束を守り続けようとした

それに、ワガママも言わない

願望は言っても、意地でも思い通りにしようとはしない

だから、不安だ

本当はつぐみが、九条さんと暮らしたいと思っても

俺を傷つけないがために素直にそれを言わないことが


さ「つぐみ」
『なぁに？』
さ「パパには……パパと九条さんにはワガママ言っていいんだからな」


分からないと言いたげな顔をするつぐみ


さ「2人ともつぐみの“パパ”なんだ。親はな、子供には本音を言って欲しいものなんだ。だから、ワガママ言ってくれた方が嬉しい」


つぐみが、どこまで俺の言葉を理解しているかは分からなけど

少しでもつぐみの心が軽くなればいい

story60→←story58

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す