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入れ忘れたテーピングの予備を救急箱に入れたあたりで侑くんはやっと声を掛けてきた。いつも謝ってくるときみたいな、硬い表情で。気まずそうな、それでいて平常心を保とうとしているような、何とも複雑な表情だ。普段の彼とは似ても似つかない、随分と妙ちきりんな顔である。
「Aちゃん」
「うん？」
「その、あの〜･･･球出しの時のな、あれは」
やっぱりそれか。彼が謝るときに言葉の続きがなかなか出て来ないのはいつものことで、自分が悪くないからとかそういうことではないと思う。
きっと、どんな言葉を選んだら良いのか迷ってる。
そりゃデリカシーのないことを言うことも少なくない彼だけど、謝るときくらいはきちんとしてる人だって観察してれば分かることだ。
「良いよ、謝らなくて。侑くん悪くないじゃんか」
「いや、言い方とかあるやろって北さんに言われてん･･･」
「じゃあ、北さんに言われたから謝りに来たの？」
「なわけあるかい！」
「あはは、冗談だってば」
余りにも必死に否定するものだから、ついつい笑ってしまった。侑くんが目に見えてほっとしているのが分かる。前にも何回か同じようなことをやっていたけど、このほっとした表情が見たくて揶揄っちゃうのは私の悪いところだな。
「ごめんね、侑くん」
「何でAちゃんが謝っとん」
「球出し他、いろいろと」
「他いろいろとって何やねん」
この、と鋭いデコピンをくらってようやくいつもの侑くんに戻ってきたことを確信する。なあ昇降口まで競走しよ、なんて言った瞬間に走り出した侑くんを鈍足なりに追いかけるので精一杯だ。
そんな私が救急箱を持っていなかった理由は、先に走り出した侑くんが走り出したと同時にそれを持って行ってくれていたからであって、ようやくたどり着いた靴箱で私が笑顔になってしまった理由は、
「･･･ほんと、かわいいなあ」
開けた靴箱の仕切り板に、『すまん』なんて走り書きされた付箋が貼ってあったからなのだ。
名前はないけれど、もちろん犯人が誰かなんて分かってる。
「A！置いてくで！」
「すみませーん！今行きます！」
かわいい誰かさんの付箋メモをポケットに押し込み、私は校門へと急いだのだった。
侑くんは
・偶にこわい
・けど正しい
・かわいいところもある
合宿所へ向かう途中、「仲直り出来て良かったな、侑」なんていう北さんの言葉に侑くんが過敏に反応したのはまた別の話である。
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シノメ(プロフ) - るぴあさん» ようやくボールペンを持ちました〜！！感想ありがとうございます！！続々編も是非楽しんで頂ければなあ、と思っておりますので〜！！ (2019年10月12日 17時) (
レス) id: 56e895e066 (このIDを非表示/違反報告)
るぴあ(プロフ) - もう、むちゃくちゃおもろいです。ボールペンを持たれるのを待ってます！！！！ (2019年10月10日 17時) (レス) id: d73982be8d (このIDを非表示/違反報告)
シノメ(プロフ) - 來さん» 待っててくださってありがとうございます！なかなか甘々な展開に持って行けてないのですが、これからちょこちょこ増やしていけたら良いなと思っております！わあ嬉しい...！身体の心配までしてくださってありがとうございました！これからも頑張ります！ (2019年9月29日 17時) (レス) id: 56e895e066 (このIDを非表示/違反報告)
來(プロフ) - 待ってました！お疲れ様です！相変わらず青春してるなー、と微笑ましく見ております。更新も早くて侑くん達と同じように作者様を応援する毎日です。体調に気をつけて頑張ってください！素敵な作品をありがとうございます！ (2019年9月28日 19時) (レス) id: 5f382bf3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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