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お昼休み。そんな嵐は突然やってきた。
お弁当と水筒を準備し、手を洗うべく立ち上がった途端教室が黄色い声に包まれる。何となく嫌な予感がして振り返ると。
「Aちゃん、しげくんが呼んでるで!」
「ああ、うん。ありがとう」
内心またか、とため息をつきつつ、入口の方へ向かえば少々気ずそうな大毅が立っていた。
「なに?」
「金貸してや」
「は?なんで?」
「財布忘れた」
いやそれはそうだろう。財布があるのにお金をせびる奴がいるか。
「……エ ロ本代?」
「はぁ!?な、な訳ないやろ!お昼や、お昼ー!」
いきなり顔を赤くして大声を出すから、元々集まっていた周りからの視線が余計集中する。大毅の野郎……と思いつつ、あまり目立たない廊下の方へ出る。
「てか大毅、一昨日もお昼代借りに来てまだ返してないやん」
「…………」
「知らんぷりしても無駄やからな」
「……えー」
唇を突き出して不機嫌なのをアピールする大毅の肩を持って、「大毅はまだまだお子様やな……」としみじみしていると。
「……もう子供やないし」
なんてこの手を突っぱねられてしまった。
そんなことで意地を張るなよと思いつつ、確かに初めて会った時は同じくらいだった身長はもう見上げるほどで、先程掴んだ肩も想定していたより逞しかったのだ。
「バイト今日入ってたっけ?」
「うん。16時から20時まで」
「バイト頑張る?」
「…頑張る」
それならよろしいと財布を取りに教室へ戻り、一昨日と同じ三百円を手渡す。
「今日は特別やで」
「…ん、さんきゅ」
ニヤリを抑えきれない顔を前にちょこちょこ出す大毅。会釈のつもりなんだろうが若干不審にも見える。そしてそのまま立ち去ろうとするから、今度は手首を掴んだ。
「待って」
「っ!?は…?な、なに?」
声が裏返り、視線が泳ぐ大毅は明らかに動揺していて、そんな怯えることないやろ……と思いつつ。
「その代わり、今度奢ってや」
「え…なに奢んの」
「そんとき食べたいやつ」
バイト代入ったら教えて、という私の言葉に、朝と同じように下唇をびえーっと出しながら「…あい」とやる気のない返事をした。
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