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そのメッセージはいくら爪を立てても、糊付けされた部分を探しても剥がれなくて、どうしても視界に入ってくる。咄嗟に小瀧くんに貸してもらったタオルで隠して、急いで家を出た。
玄関の扉を開ければ、案の定ガラスの靴が綺麗に揃えて置いてあった。ただ前と違っていたのは、既に流星が家の前にいたこと。
「おは」
「あ…お、おは…よ」
目の前にガラスの靴、少し向こうに手を振る流星。
「その靴、どしたん?」
「え?ああ……」
なんて言えばいいんだ。顔も名前も分からない誰かからの押し付けだなんて言えるわけない。
「私も知らんねん」
「え、そうなん?」
「うん、なんでこんなとこにあるんだろ。とりあえず退けておこっかな」
本当は側溝にでも流してやりたいけど、流星が見てる前でそんなことはできない。流星はそれ以上言及して来なかった。
いつもと同じように、私が立ち止まって流星が歩き出す。入れ替わりのような形で、神山くんに声を掛けられた。
「あれ?なんで流星?」
「ああ、いや…さっきそこで会って、少しだけ話したの」
「そうなんや。流星って一人が好きなんかと思ってたけど、やっぱいい奴やんな」
神山くんの花が咲いたような笑顔。誰にでも分け隔てなく接する神山くんは、やはり学級委員長らしいなって思う。
「そいえば、しげがAと話したがってたけど」
「え…」
思わず立ち止まってしまった。神山くんが振り返る。
「…断っとく?」
「うん…」
神山くんもそれ以上詮索せずに、ただ頷いてくれた。
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作者名:ぴの山 | 作成日時:2021年8月8日 15時