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しばらく動けないままでいると、流星が駆け寄ってきてくれた。
「Aだいじょぶか、しげに何かされた?」
またその優しい声色に体を預けてしまいそう。けれど、もうすぐチャイムが鳴りそうだから私たち以外はみんな席に着いている。
「だいじょぶやから」
「でも、」
「ほんまにっ近づかんで!」
差し出された腕を振り払うと、全員の目線が私たちに集まってることにようやく気がついた。沈黙に耐えられず、教室を飛び出した。
保健室に行ってそのまま帰るという選択肢もあったが、窓が割られた空き教室が気になって、自然とそちらに足が向いた。
誰もいないと思っていたから、教室に足を踏み入れて一瞬、息をするのを忘れた。
「あれ、先輩もサボりっすか?」
珍しい、と鼻で笑う仕草をする彼は、放課後夜遅くまで毎日見ている顔。
「小瀧くんこそサボり?」
「まあそれもありますけど、惨状が気になってしまって」
気づいたらチャイム鳴ってました、とのこと。小瀧くんの言う惨状は、説明するまでもなく窓ガラスが全て割られた上、回収されていたこと。
「あとやっぱ、今の絵がどうしても気に入らんくて」
「私は素敵だと思うけど」
「なんかインパクトが足りないんすよ。ただファンタジックなだけやあかんなぁって」
美術部で忙しない日々を不本意そうにしていた小瀧くんだけど、なんだかんだ本気で部活に取り組んでくれてるんだと嬉しくなる。
「俺多分、物作りの方が向いてるんすよ」
小瀧くんの手元には、カボチャのオブジェが。
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作者名:ぴの山 | 作成日時:2021年8月8日 15時