ひとりじゃない証-No.2- 【金田一少年の事件簿】初代実写版 (ページ32)

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24話ページ32

先輩は腕時計がついている腕を此方に見せると、嘲笑的に笑った。

遠野「大切な瑩子の形見だけはな!」

甲田「やはりそうだったのか」

あたしとはじめちゃんがじっと先輩を見つめていると、甲田さんが先輩を見つめながら口を開いた。

甲田「君はあの時死んだ、小泉瑩子さんの」

一「『小泉…瑩子…？』」

先輩が甲田さんを見る。
あたしたちが不思議そうにその名前を呼ぶと、甲田さんはあの時の事を話してくれた。

オリエンタル号沈没事故が起きたのは大嵐の夜だった。
満員の救命ボートに小泉さんはしがみつき、甲田さんは引っ張り上げようとしたのだが。
「これ以上誰かが乗るとボートは沈む。皆を殺す気か!」と叫ぶ乗客に甲田さんは負け、小泉さんの手を離してしまったらしい。

甲田「後でその子が小泉瑩子さんだという事を知りました。それきり私はずっと苦しみ続けてきたんです」

遠野「貴様が瑩子を…!俺の愛する…この世でたった一人の瑩子を!!」

先輩はすぐに甲田さんに掴みかかった。
急いでいつきさんが彼から引き剥がして後ろから取り押さえるが、先輩は憎しみに感情を染めた顔で甲田さんを睨み続けた。

あの事故の後日、沖へと引き揚げられた彼女の死体が握っていたのは一つのモノだった。
先輩は警察に彼女を殺した犯人を捕まえてほしいと言ったが、法廷で裁くことはできないと言われたらしい。
そういう場合は緊急避難と言って罪にはとわれないのだ。

遠野「その時俺は誓った。このイニシャルの奴を必ず見つけ出して殺してやると!俺のこの手で!!」

先輩は激昂した様子で甲田さんに掴みかかろうとしたが、いつきさんに取り押さえられて動くことはできなかった。
そんな先輩を甲田さんは何とも言えない顔で見つめる。

遠野「俺は乗船名簿からS.Kのイニシャルを持つ人間をピックアップした。該当する人間は全部で7人。だけど…この中の誰が瑩子を殺したのかどうしてもわからなかった!そこで俺は決めたのさ!だったら…全員殺せばいいんだってな!!」

もがきながら声を上げる先輩をあたしとはじめちゃんはじっと見つめた。

いつき「この野郎!たった一人殺すために俺たちが殺されそうになったのか!!」

いつきさんが怒鳴るが先輩は笑っていた。

遠野「俺にとっての瑩子の命は、お前ら全員分よりずっと重い命だったんだよ!!」

先輩はいつきさんを振り払うと九条さんを突き飛ばした。
そして斧を奪い取ると甲田さんを睨みつける。