第31話 「心におさめた槍」 ページ33
Aとヨナとカナが座り込む前でハクはガリガリガリと木の棒で地面に何かを書いていた。
「長ーっ」
「若長ーっ」
そこに来たのは村の者たちで、テウまでいる。
「川の水がない〜っ」
「日照りでもないのに」
「命の水とも言える川がっ」
「わかっとるわ、小心者共。今、ヘンデを上流の調査に向かわせてる」
その会話の中でもガリガリガリと地面に何かを書き続けるハク。
Aとヨナとカナはそれをじっと見つめていた。
「何してんの?長」
「もしこれからずっと川が枯れてたら当分は商談から水を買わなきゃならない。遠方へ汲みに行ったとしても人手とそれにかかる費用ときたら…。
クックック…もはや笑えてくるな」
「金の計算か」
「兄ちゃん、お姫様守ってるのも金目当てって聞いたけど本当か?」
テヨン、それを聞いちゃあ…とカナが思っているとテヨンの質問に興味を持ったAとヨナがハクを見つめた。
「他に何があるってんだ」
『「!?」』
そんなハクの言葉にAとヨナは驚きの表情を浮かべる。
すると門の方から、あっ、と声が聞こえた。
「長老だ。ムンドク長老が帰ってきたーーっ」
その言葉にA達が顔を上げて立ち上がる。
カランとハクが放り投げた木の棒が地面に転がると同時にA達はムンドクの元へと走り出した。
「ジジィーーーー」
「ムンドク様ーーーー」
馬から下りていたムンドクはハクとカナの声に顔を向けた。
そんなムンドクの目に映ったのは自分を見つめるAとヨナとハクとカナの姿。
それを見たAとヨナが走り出すとムンドクはぎゅっと2人の体を抱きしめた。
「よかった、ご無事だったか。よかった。
信じたくなかったが…陛下が亡くなられて貴女たちとハクとカナが城を去ったという事は、やはりそうなのか…」
ムンドクの言葉にハクとカナは目を合わせた。
ムンドクに抱きしめられているAとヨナの目から涙が溢れ出す。
「その時お守り出来ず、口惜しい」
『「……苦しい」』
「お」
思ったよりキツく抱きしめられていた2人が声を出すとムンドクはその力を緩めた。
そしてAの肩に手を置きながら口を開く。
「……少し、お痩せになられましたか」
『……ううん。温かいもの、おいしいもの、たくさんもらったの。あんなに美味しいごはん、初めて食べた。風の部族はムンドクみたい。あったかくてほっとする』
Aの言葉にヨナが同意するように頷くとムンドクは微笑んだ。
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ムーミン一家 - 暁のヨナ、私も最近ファンになりました!面白いですよね〜ちなみに私はジェハ押しです。これからも頑張って下さい! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 8c840e0186 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファンになりました。早く続きが読みたいです。これからも更新楽しみにしてます。頑張って下さい。応援します。 (2018年7月7日 19時) (レス) id: 6d5e66c80d (このIDを非表示/違反報告)
ルイナ(プロフ) - 待ってました!更新これからも頑張ってください♪ (2018年7月6日 18時) (レス) id: 29bcf3ece3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月6日 17時