【実況者】その夢は醒めないままで【ky】 (ページ26)

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聞かなきゃよかった、素直にそう思った。

「ずっと、ファンだって、推しのうちの1人だって、そう思い込んでたんですけど……、やっぱ、好きだったんだなぁって…」

そう言って涙を流すAを、俺は思わず抱きしめていた。こんなん、見てられねぇよ。

「……なんか、ごめん」

無意識に追い詰めてしまったのか、俺がそう言うと、腕の中でAは言う。

「いや、こちらこそ、急にすみません……ん？」

腕を解かれそうになったけど、まだ離したくなくて、俺の力は強くなっていく。

「あの……は、離してくだ……」

「やだ」

「どうして！？」

ばっと顔を上げるA。俺は、他の男の話で泣いているAの顔を見たくなくて、後頭部を支えて胸の中に押し付けた。

「タメでいいって言ったのに、ずっと敬語だし……」

「そこ！？」

本当は違う。適当な言い訳だ。

「あと……」

だけど。

「泣かれるのは、困る……」

情けない話だけど、これはホントだ。俺は女のなぐさめ方なんて知らないし。

Aは、自分が泣いていることに今気づいたような反応をした。

そして、涙腺が決壊したかのように泣き出したのだった。