54話 ページ6
「くっそお!!!」
後半ロスタイムという土壇場で同点に追い付かれてしまったイナズマジャパン。円堂が悔しさをぶつけるように地面を強く殴る。そしてベンチ陣までもが茫然とする中、やはり久遠だけは変わらず、ただじっとフィールドを見つめていた。
「豪炎寺さん」
「……」
眠れる虎が目覚めるのを、待っているかのように。
「皆諦めるな!攻め上がれ!!」
そう叫ぶ鬼道の声は枯れ、息も上がっていた。あのタイミングでゴールを決められ、疲労感や倦怠感は尋常ではないだろう。それでもこうして声を上げ仲間を鼓舞するのは、世界への挑戦がここで終わっていいはずがないのだという思いからきていることに他ならなかった。
『っ虎丸君!!』
「はい!」
水城からボールを受け取ると、他よりも体力の残っている虎丸は立ち塞がったディフェンスを難なく突破しゴールに迫る。
「…豪炎寺さん!!」
「…!」
ゴールは目前。一目見れば分かるほどに豪炎寺と虎丸の残りの体力の差は顕著に表れている。それでも一瞬逡巡して、やはり自らシュートを打たずパスを寄越してきた虎丸に、ついに彼の堪忍袋の緒が切れた。
顔を歪め歯を食いしばると、その力はどこに残っていたのか強くボールを蹴り返した豪炎寺。反応する間もなくボールをぶつけられた虎丸は勢いよく尻もちをつくと、痛みと豪炎寺の行動に眉を
「っつ…何するんですか豪炎寺さん!」
「さっきからなんだ、お前のプレーは!!」
肩を押さえながら豪炎寺を見上げ非難の声を上げるも、返ってきた言葉に自覚はあったようで顔を背けた虎丸。
「試合時間は残っていないんだぞ…精一杯、ベストと思えるプレーをしろ!!」
続けられた豪炎寺の言葉に、思わず虎丸は顔を上げた。瞳が揺れる。
「これが俺のベストです!!俺のアシストで皆が点を取る!!それが一番なんですよ!!!そうすれば俺が、皆の活躍の場を奪うこともない…!皆で楽しくサッカーができるんです!!」
その叫びは、豪炎寺以上に自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
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bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました!これからまた読み直そうと思います!ご自身のペースで更新してくださると嬉しいです(◍•ᴗ•◍) (12月28日 21時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - とても面白かっです!!続きが気になりすぎて夜しか眠れません。更新よろしくお願いします (12月15日 18時) (レス) id: 51c9a307dd (このIDを非表示/違反報告)
サカナ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!思わず一気見しちゃいました笑更新楽しみにしてます! (10月29日 22時) (レス) @page29 id: ff0b9e3173 (このIDを非表示/違反報告)
テオ - とても面白かったです!続きが気になります!!また書いてくれるのを楽しみにまっています! (8月31日 9時) (レス) @page29 id: 715df6a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - またまた戻って来てしまいました……!イナズマイレブン熱はいつになっても冷めないようです笑何度読んでも面白くて最高です! (8月21日 19時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:不二市 | 作成日時:2019年1月7日 3時