59話 ページ11
「…あれは」
空き地で響木に時々助言を与えられながら特訓に励んだ、その帰り道。ユニフォーム姿でボールを脇に抱え土手を歩いていた飛鷹は、河川敷で無人のゴールに向かって一人シュートを打ち続ける水城を発見し思わず足を止める。
『…飛鷹君?』
「え、あ……。……ウッス水城さん…。…ここで何を?」
一旦休憩に入ろうとしたのだろう、しばらくするとベンチの方に体を向けた水城が土手の上に立つ飛鷹に気付いた。小さく頭を下げてから土手を下り尋ねれば、水城はタオルで汗を拭いながら少し考えた後口を開く。
『自主的な補習、って感じかなあ』
「え、でも今日倒れて…」
あのとき、フィールドの周りを走っていた飛鷹も水城が倒れたことは知っていた。結局練習への復帰も叶わず、加えてあまりの顔色の悪さを見兼ねたマネージャー陣によって最後は保健室に強制連行されたことも。
『うん、だからその分のこれ』
「…雷門中でする方が、もしものときに安全だと思うんですが…」
その彼女が、合宿所としての役割も担う雷門中からそれなりに距離のある河川敷で、1人で練習をしていたのだ。前者の方が練習に付き合ってくれる相手もいるし設備も整っている。そして何より、また倒れてしまったときにはきちんと対処できるのに。
『なんていうかね、今の私は見られたくないの』
「え?」
思わず地面から水城に視線を移す。数週間前に知り合ってから今まで、見られたくないのだと言うほどに彼女が不振に陥っている姿は飛鷹の記憶にない。やはり素人目では分からない何かがあるのだろうか。飛鷹は小首を傾げた。
『特にキャプテンには』
しかし次に続いたその言葉に、不調だからだとかそんな単純な話ではないのだと飛鷹はなんとなしに悟る。普段は鈍いのに、怖いくらい鋭いときがあるから。そう言い継いだ彼女に飛鷹は何も言えず黙り込んでしまう。
「……」
『…でもそうだな、せっかく飛鷹君が心配してくれたんだし、今日はもう合宿所に戻ろうかな』
「自分は別に、心配なんて、……」
言葉を詰まらせ、当惑した様子で視線をさまよわせる飛鷹に水城は眉尻を下げ微笑を浮かべた。夕日で淡い橙に染まった白い髪が、吹き抜けた一陣の風に揺らされる。
『だけど私は、もっと頑張らなくちゃいけないから』
真紅の光が微かに覗いて、消えた。
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bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからまた読み直そうと思います！ご自身のペースで更新してくださると嬉しいです(◍•ᴗ•◍) (12月28日 21時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - とても面白かっです！！続きが気になりすぎて夜しか眠れません。更新よろしくお願いします (12月15日 18時) (レス) id: 51c9a307dd (このIDを非表示/違反報告)
サカナ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます！思わず一気見しちゃいました笑更新楽しみにしてます！ (10月29日 22時) (レス) @page29 id: ff0b9e3173 (このIDを非表示/違反報告)
テオ - とても面白かったです！続きが気になります！！また書いてくれるのを楽しみにまっています！ (8月31日 9時) (レス) @page29 id: 715df6a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - またまた戻って来てしまいました……！イナズマイレブン熱はいつになっても冷めないようです笑何度読んでも面白くて最高です！ (8月21日 19時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：不二市
| 作成日時：2019年1月7日 3時
