【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス VII (ページ41)

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41話ページ41

「美味かったなあ」

『たまにはこういうのも楽しいね』

皿や椀がぶつかる音と出しっぱなしの水がシンクに当たる音が響く、数十分前の喧騒とは一転して静寂に包まれた食堂。その調理場のシンク前に風丸と水城は並んで立ち、会話を交わしながら片付け作業を行っていた。

『久遠監督、もう食べてくれたかなあ』

「どうだろうな。というか、監督が食事してるの想像できないんだが」

『分かる』

右手に持ったスポンジで左手に持った皿を磨く水城。濯いで泡を落としたら隣に立つ風丸に渡し、受け取った風丸は清潔なタオルで水滴を拭き取っていく。

『でも風丸君、あの人数で一人負けって凄いね』

「ブーメランだぞー」

水城の言葉に、傍らに着々と皿の塔を建設していた風丸が笑いながら突っ込む。そう実はこの2人、全員で片付けじゃんけんをしたところ1回目に風丸、2回目に水城が見事に一人負けしたのだ。

「デザートじゃんけんはほぼ負けなしだったのにな」

『あーキャラバンにいたときの』

「それそれ」

全国各地を回っていた頃、その日の夜ご飯に付けるデザートが余った場合は誰がそれを貰うかじゃんけんで決めていた雷門イレブン。その際に強かったのが水城で、かなり頻繁に一人勝ちしてはプリンやシュークリームを貰っていたのを風丸は覚えていた。

「最終確認ー。食器よーし」

『食器よーし。窓よーし』

「窓よーし。換気扇よーし」

『換気扇よーし。テーブル拭きよーし』

「テーブル拭きよーし」

皿の塔を元あった棚に戻したら分担して食事スペースのテーブルを布巾で拭き、開けていた窓を閉めた。最後に換気扇を止めると一つ一つ指を差しながら確認する風丸と水城。大丈夫だと頷き合い全ての明かりを落とし、2人は食堂を後にした。

「そうだ一青、これたくさん貰ったからやるよ」

『わあいいの?ありがとう風丸君』

風丸が個包装された飴を三つほど握らせると、驚きながらも目を輝かせてありがたく頂戴する水城。お疲れ、おやすみ、また明日。そう声をかけ合い、それぞれの部屋に引っ込んだ。

そんなやり取りの1時間後。風呂に入り、髪を乾かし、歯を磨いてさあ寝ようというところで水城は秋から渡された手紙の存在を思い出す。机の前に腰を下ろし、いくつかある中の一つを手に取って開封した、

『え、』

直後、指に細く鋭い痛みが走る。突然のことに脳の処理が追い付かず、水城は机に滴る赤を茫然としてただ見つめることしかできないでいた。