【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス VII (ページ17)

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17話ページ17

「壁山!練習だぞ!」

ノックをしてから壁山の部屋に入り明るく声をかけた円堂。目に入ったのは部屋の主の、ディフェンスの要である3を背負った背中。ベッドの上で殻にこもる蝸(カタツムリ)のように丸くなっていて、本人の心情もあってかいつもより小さく見えた。あくまで当社比である。

「キャプテン、ごめんなさいっス…。俺もう練習に着いていけないっス…」

返ってきたのは、今までにないくらいか細い声だった。考えの読めない久遠にいつ名指しで怒鳴られるのかという恐怖で震える壁山。円堂は近付き、その肩を叩いた。

「…なあ壁山。好きなんだろ?サッカー」

「……は、はいっス…」

返事をすると、表情を伺うように円堂の顔を見る。壁山の予想に反し円堂の表情は優しく、目が合うとにっと歯を見せて笑った。

「だったら負けるな!辛いなら、辛いのごと楽しめばいいんだ!!」

「キャプテン…!!」

壁山は目に涙を湛えながらも頷き、そして円堂と共に部屋から出ていった。外で待っていた他のメンバーは合宿所から出てきた壁山に駆け寄っていくが、その表情を見て心配することはないと分かったのかほっとした様子でグラウンドへと向かう。

『キャプテン、壁山君になんて言ったの?』

「ん?ああ!辛いんだったら、辛いのごと楽しめって!そしたら、いつか絶対に辛いのも楽しくなるだろ!」

『そう、』

「よおし!今日の練習も頑張るぞー!!張り切っていこうぜ、一青!!」

『もちろんだよ、キャプテン』

練習が始まった。壁山は虎丸と木暮に挟まれながらもボールをキープして走る。昨日は途中で倒れてしまい久遠に叱咤されていたが、今日は違っていた。

「負けないっス…!!俺っ、サッカー大好きっスからあああ!!!」

虎丸と木暮を振り切り前線にボールを繋ぐ。昨日の自分を超える。その言葉を体現したかのように、壁山の気迫もプレーも良い方向に変わっていた。

『…どうしても楽しくならなかったときはどうするの。ねえ、』

キャプテン。

一瞬、紺碧に真紅が混じる。消え入りそうな声でこぼしたその言葉は、誰にも聞かれることなく空気に溶けていった。