181話 ページ36
『お邪魔しまーす…』
「おっ一青!やっと来たな!」
初めてマジン・ザ・ハンドを目にしたときの立向居の如く円堂の母、温子は雷に打たれたような衝撃を受けた。息子にあんなに綺麗なチームメイトがいるなんて、と。
『水城一青です。今夜はお世話になります』
「…」
『…?あの…』
「あ、ええ、一青ちゃんね!自分の家だと思って寛いでいってちょうだい!」
『はい、ありがとうございます!』
バーベキューをする雷門イレブンを見守っていた温子。吹雪がやって来た数分後に鞄の肩紐を握りながら遠慮がちに庭を覗き込む、息子と同じジャージを着た少女に目を奪われた。
振り返り声をかけた円堂に微笑みを返し、そして自分に挨拶をしに小走りでやってくる。近くで見るとさらに綺麗で、我に返ると慌てて歓迎の言葉を送った。最近の子は笑ったら花を背負うのか、凄い。
「早くしないと全部なくなっちまうぜ!」
『それは困るなあ。たくさん歩いたからお腹空いちゃってるのに』
「どこまで行ってたんだお前は…」
『海が見えたよ』
「それ絶対稲妻町から出てただろ」
『出てた出てた』
秋から肉を、円堂から肉じゃがを受け取った水城は吹雪の隣に座る。普段の行動時といいバスの座席といい、もはや隣にいるのが当たり前のようになっていた。自然と足が向かうらしい。
「眠れないのか?水城」
『…豪炎寺君。まだ起きてたんだね』
「その台詞、そのままそっくり返すよ」
そして夜中。塔子、リカと共に割り振られた部屋で布団に入っていたものの妙に目が冴えて眠れなかった水城は、部屋から出てリビングの窓から都会の少し淀んだ夜空を見上げていた。
そこに豪炎寺がやってくる。この町に家のある豪炎寺や鬼道も今日は泊まっているのだ。髪が下りていたので一瞬誰だか判別できず、水城は返事が一拍遅れてしまった。
部屋の扉が閉まった微かな音に反応し、気になって降りてきた豪炎寺。そしてリビングを覗くと、水城がぽつんと窓際で体操座りをしていた。
「明日も練習だ。早く寝た方が良いぞ」
『…そうだよね、でも眠れないの』
「…どうした?家が恋しくなったか?」
『あはは、わりと合ってるかも。肉じゃが食べて、母さんたち何してるかなーって』
宇宙人退治という規格外なことをしていてもまだ14歳で、中学生だ。学校行事でもない長期間の旅は水城にストレスは与えなくとも、日に日に寂しさを膨らまさせていた。
403人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:不二市 | 作成日時:2018年4月23日 23時