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「そのヴェールを
雷門中のスポンサー、ISLAND観光の広告の次に流れた本日の対戦相手のスポンサー、ルミナスヴェールの広告。ほんの10秒のそれに稲森はただただ目を奪われた。
ルミナスヴェール。日本の大手化粧品会社だ。先程の広告は透けたヴェールを
稲森には彼女の周りに花が咲いているように見えたが、実際はそんな編集はされていないのでただの幻覚である。
『綺麗に撮れていたでしょう?』
「……え?あ、はい!見たことないくらい綺麗でした!!」
もうすでに得点板へと切り替えられたのにも関わらず電光掲示板を見上げていた稲森にかけられた声。対戦相手である湊中のキャプテン、水城だった。
「私プレカコンプリートしてるんです!最近のおすすめは王帝月ノ宮のキャプテンの野坂君!サッカーしてる男子ってやっぱかっこいいですよね〜!」
「その下の人は?」
「お目が高いですね!湊中の水城一青さんです!女性で、しかもキャプテンなんですよ!凄いですよね〜!」
「綺麗な人ー…」
そんな会話をしたのはまだこちらに来てから間もない頃だった気がする。「この人が水城一青さん…」と稲森は心の中で呟いた。プレイヤーズカードで見るより、それこそ息を呑むほど綺麗な人だった。
『うんそっか、ありがとう』
「?知り合いなんですか?」
『ああ、あれ私』
「……え、えええ!?!?」
稲森は目の前の水城と、前述したがもう得点板に切り替えられた電光掲示板を交互に見た。確かにどちらも綺麗な人だった。しかし広告と目の前の彼女、決定的な違いがあった。表情。広告の彼女はこちらが安心するような笑顔だったのに、目の前の彼女はまるで人形のように無表情だ。
『不思議だよね、皆驚くの。髪も、顔のパーツも何も変わっていないのに。表情だけでこんなに気付かれないものなんだね』
「そ、そうですね…?」
水城は頬に手を当てる。稲森自身も気付けないものなのかと驚いた。確かに広告の彼女と目の前の彼女、言われてみれば全く一緒だ。違うのは表情だけ。
『よろしく、良い試合をしようね』
「はい、よろしくお願いします!!」
雷門中 対 湊中、試合開始。
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作者名:不二市 | 作成日時:2018年4月9日 0時