16話 ページ16
「なるほど、お話はよく分かりました」
「それじゃあっ俺たちと一緒に戦ってくれるんだな!?」
「いいえ」
先程の長身の少年、垣田により蹴球道場に案内される。普段こういった道場に入る機会なんてないため勝手が分からず、全員が自然と正座になった。
そして漫遊寺サッカー部と対面。雷門側の真ん中にいる円堂と対峙して受け答えするのはキャプテンの垣田ではなく、緑色の髪にビンディーが特徴の影田。嬉しそうに声を弾ませた円堂とは対照的に淡々と返した。
「私たちは、戦うつもりはありません」
『戦うつもりがない?』
「はい。………観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舍利子色不異空…」
『!?』
鬼道の隣に座る水城を見た影田が般若心経を唱え始めた。どこかで見た光景だ。よく見ると影田の他にも数人唱えている。
「ふ──っ…。失礼しました。私たちがサッカーをしているのは、あくまで心と体を鍛えるため。争うためではないので」
一青を目に入れただけで錯乱して般若心経唱える奴らが何を言っているんだ…。思ったが口には出さなかった鬼道。
「彼らには、私たちに戦う意思のないことを話して、お引き取りいただきます」
「お引き取り…?」
「お、おい!お前ら話聞いてたのかよ!?そんな話が通じる相手じゃねえって言ってんだろ!!」
まさかの対応に円堂は困惑する。話の通じない彼らに参った染岡が立ち上がり声を上げた。しかしそれも「それは貴方の心に邪念があるからです」と切り捨てられ、まさか邪念云々の話をされるとは思っていなかった染岡は呆気に取られる。
「心を無にして語りかければ、伝わらぬことはありません」
いよいよドン引いた目になってきた染岡が「なんだよこいつら…」とこぼした。
「では、失礼いたします。修行の時間ですので」
立ち上がってからそう言い、最初に会ったときに垣田がしていたように左掌に右拳を当てて黙礼した。
「え、あ!おい、ちょっと待てよ!!」
そんな円堂の制止の声は意味もなく全員が道場から出ていってしまう。パタン、と木製の両開き扉の閉まる音が虚しく響いた。
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作者名:不二市 | 作成日時:2017年9月20日 9時