1話 ページ1
「曾祖母を、よろしく頼む」
気が付けば目の前には白銀の髪と真紅の瞳、褐色の肌を持つ同年代らしき少年が立っていた。体にフィットした赤黒いユニフォームを着ている彼と自分の間には、空から伸びた赤い半透明の壁がある。
彼は右手を握り拳にして左胸に当てると控えめに微笑んで、最後に確かにそう言って消えたのだ。
「ちょっと待ってくれよ…!ソウソボって…というか
お前は誰なんだ!?…はっ」
「…円堂、まだ寝惚けてるのか?」
目の前に先程の少年はおらず、代わりに一つ空けて隣の座席の風丸に呆れた表情で覗き込まれていた。円堂は目だけを動かして周囲を確認する。ああここは、イナズマキャラバンの中だ。海沿いの道路を走っている。ガードレールの向こうに青い海と白い港が見えた。
「もう石川県に入ったぞ。あと30分もすれば到着するそうだ。それまでにその寝惚けた頭、どうにかしておけよ」
前の座席の鬼道も振り返り、ゴーグルで判別しづらいものの恐らく呆れているのだろう。その隣に座る塔子は「円堂よだれ垂れてるよ」と自身の口元を指差した。
「あ、ああ」と円堂は曖昧に返して口元を拭う。先程まで見ていた夢が、夢で片付けられないほどに鮮明でリアルで、普段からサッカーで埋め尽くされた脳内に少しスペースを空けて思考する。
場所はフットボールフロンティアスタジアムで、自身の背後には今は療養中の半田や松野たち、それに吹雪と見覚えのない同年代らしき少年が数名いた。そして目の前には意味深な言葉を言ってから消えた少年と、その仲間であろう少年たち。
「…なあ鬼道、ソウソボってなんだ?」
「急にどうした。ソウソボ…曾祖母のことか?曾お祖母さんのことだ」
「ありがとう!」
質問をし答えを聞くとすぐに再び思考の海に沈んだ円堂に、鬼道は不思議を飛び越え怪訝な顔になった。
曾祖母?何故自分と同年代の少年が自身の曾お祖母さんのことを頼むのだろうか。円堂自身、祖父母はいるが幼少期に曾祖父母は亡くなっている。年齢的になんら不思議なことではない。
「…??」
「皆さーん!北海道からの長旅でお疲れだとは思いますが、泡沫の精霊、水城一青さんについて再度確認しておきますよー!!」
春奈が一番前の座席から振り返り大声でそう言ったところで、円堂は思考を放棄しそちらに意識を傾けた。
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作者名:不二市 | 作成日時:2017年9月20日 9時