1の9 ページ10
金糸雀side
草木も眠る丑三つ時。
鏡の向こう側からは物音ひとつない。
これはまたトイレの鏡とかになったパターンか？
そっと鏡の蓋の留め金を外し、片側だけ静かに、細く開く。
そのままで静止し、気配を探ること数十秒。
何かが飛び出してくるんじゃないかとビクビクしながら覗いてみると、そこに映っていたのは五虎退を怖がらせてしまったトイレだった。
んー、ここじゃあ誰もいないし、鶴を飛ばすわけにもいかないか？
昨日の粟田口の怪我を見るに、1日たりとも休むべきではないというか、本丸中回って手入れをすべきなのだろうが俺にそんな度胸はない。
よって、全開にしてしまった鏡に蓋をして、音遮断の結界を張って自室に
「、君は」
戻り、たかった。
「誰だい？」
気づいたときにはそこにいた、というのが最も正しい表現か。
”鏡”から直線距離にして2メートルほどの場所にいた彼はゆっくりと”俺”に向かって近づいてくる。
「っ！」
ダメだ、このままじゃ！
雰囲気に呑み込まれて良いようにされてもしかしたら喋ってしまうかもしれない。
それは、嫌、絶対的に。
バン！と派手な音を立てて蓋が閉じる。
いや、閉じたのは俺だ、自然にじゃない。
慌ただしく金具を掴み、蓋が開かないようにご丁寧に手で押さえる始末。
なんだよ、なにを警戒してんだよ。
青江がこっちにくることか？
いや、まだ鏡は繋がってないし、そんなことは起こり用がない。
いや、正確には起こるかもしれないが蓋を閉めた時点で起こらない、だ。
それなのに、安全圏にいるのに、俺の震えは止まらない。
声が出ない、呼吸がままならない、甲高い音が鳴り響く。
息が荒くなる、向こうから声が聞こえる。
なに？なんて言ってる？なにも言わないでくれよ、聞きたくない、知りたくない、黙って、黙ってる、嫌だ、話せない、話したくないって、怖い
「……
・
(見るなよ)」
口だけでそういった俺は手入れ用と決めた青色の折り鶴を掴み、霊力を流し入れ、そして、鏡を本丸と繋げた。
届け、と金具を外し、隙間を作る。
俺からは向こう側は見えない。
だけど見えなくていい。
届け。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 342人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灰雪(プロフ) - 壬卯兎さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！とうらぶ小説一緒に増やしましょう！更新頑張らせて頂きます！ (2017年12月14日 20時) (
レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
壬卯兎 - 面白いです！なんかもう、書き方から何まで凄く参考になります…これからも頑張ってください！＆私もとうらぶ書いてるので一緒にがんばりましょう！更新楽しみにしています！ (2017年12月14日 8時) (レス) id: 1ea793e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
灰雪(プロフ) - 苺パフェさん» ありがとうございます！狭いジャンルなので初めて読むと言われると嬉しいです！更新頑張らせて頂きます！ (2017年12月12日 22時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
苺パフェ - 面白かったです！初めて読むタイプの作品でした。大変でしょうが、続きがめっちゃ気になるので、更新、頑張ってください！ (2017年12月12日 21時) (レス) id: 92fa33393a (このIDを非表示/違反報告)
灰雪(プロフ) - 銀色ミカンさん» 応援ありがとうございます！更新頑張らせて頂きます！ (2017年12月12日 19時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
