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金糸雀side
鏡の向こうからはうーん、と誰かの唸る声が聞こえる。
なんの意味も成さないそれは恐らく寝言で、魘されているのかな?と疑問に思い、少しだけ鏡を開いた。
そこは、恐らく粟田口という刀派のひとたちの部屋で、中には6人が寝ていた。
が、色がおかしい。
いくら暗くてもわかるほどに汚い。
何で汚れているかわかるほどに、汚れている。
ひと、が、いる。
俺は初対面のひとと話せないし顔も見れない。
だけど、今なら。
今だけなら行けるんじゃないか?
いや、行かなければいけないんじゃないか?
グッと息を呑み、手のひらを鏡に押し付ける。
そして、体の内を流れる血を手のひらに集めるように意識すると、ズブ、と鏡の中に吸い込まれていく。
気持ち悪い、早く、もっとスルッといけ!
そう願えば一気に手を引っ張られ、たちまち本丸の世界にきた。
・
・
・
「し、失礼しまーす……」
ひくびくと鉄臭い部屋をしのび足で歩き、寝ている少年たちに近づく。
一番魘されていると思しき五虎退に、前驚かせてしまった詫びも含めてそっと手を触れる。
そして、ゆっくりと霊力を流した。
2の手紙には、人様の刀剣を直してはいけないが、見つからなければ大丈夫だとかいてあった。
だから服の下ならオーケーなはず!
絶妙な力加減で霊力を流し続け、たまに服をずらして傷の治り具合を確認し、程々の所で次の子に移る。
そうして、五虎退、乱、厚、平野、前田を直し、いよいよ最後の薬研に手を伸ばそうとし、
障子に影が落ちたのを見た。
「悪いけど入るよ」
その声が聞こえる頃には俺はもう走っていた。
音を立てて開かれる障子を横目で見ながら、俺は鏡に指先を触れさせ、願う。
”すぐにここから出せ!”
思いは通じ、俺はじいちゃんの部屋へと戻る。
そして、音を機にする暇もなく、全力で鏡の扉を閉めた。
「っ、はぁ、はっ、はっ…………」
鏡の向こうからは音はしない。
だけど、誰か、いる。
何か、いる。
それだけはわかって、俺はズルズルと這うようにして鏡から離れた。
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灰雪(プロフ) - 壬卯兎さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!とうらぶ小説一緒に増やしましょう!更新頑張らせて頂きます! (2017年12月14日 20時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
壬卯兎 - 面白いです!なんかもう、書き方から何まで凄く参考になります…これからも頑張ってください!&私もとうらぶ書いてるので一緒にがんばりましょう!更新楽しみにしています! (2017年12月14日 8時) (レス) id: 1ea793e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
灰雪(プロフ) - 苺パフェさん» ありがとうございます!狭いジャンルなので初めて読むと言われると嬉しいです!更新頑張らせて頂きます! (2017年12月12日 22時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
苺パフェ - 面白かったです!初めて読むタイプの作品でした。大変でしょうが、続きがめっちゃ気になるので、更新、頑張ってください! (2017年12月12日 21時) (レス) id: 92fa33393a (このIDを非表示/違反報告)
灰雪(プロフ) - 銀色ミカンさん» 応援ありがとうございます!更新頑張らせて頂きます! (2017年12月12日 19時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
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