陶酔 ページ28
大きな窓から入る日差しがとても気持ちよく、隣を見ると大好きなシャルが寝息を立てて眠っている。
『俺を信じれるようになるまで待ってる』
シャルのその言葉が嬉しくて、昨日のことを思い出して嬉しくてニヤけてしまう。
人差し指をそっと伸ばし、シャルの唇を触る。この唇と私は昨日……そう思うと急に恥ずかしさが込み上げてくる。
「っ！？」
ふいに生暖かい何かが私の人差し指を包んだ、と思ったらシャルが私の唇を咥えている。
口内で私の指を弄び、チラッとこちらに目をやるシャル。
「っ……シャルやめ……っ」
甘い吐息と共に抵抗してみるがあまり効果は無さそうで。
ようやく解放されると、シャルは自分の腕を枕にしてこちらを向いて意地悪そうに笑う。
「寝込みを襲うような子にはお仕置きです」
「なっ、そんなんじゃ……っ」
「俺ちゃんと我慢したんだから、これぐらいのご褒美は貰えると思うんだけど」
そう言うと、また意地悪な顔で笑う。
「な……っ、だからって……」
「夢みたい、起きてすぐに隣にAが居るなんて」
そう言いかけた私を見つめ、シャルが感慨深いような、噛み締めるような声で呟く。
私もだよ、シャル。ありがとう。私の気持ちをいつも尊重してくれて。
そんな風にベッドの上で他愛のない会話をすると、扉を叩く音がする。朝食を持ってきてくれたようだ。
のろりのろりと布団から出て、のんびり支度をして大きなダイニングテーブルに向かい合い朝食を食べる。
「朝からこんなにたくさん食べれるなんて最高！」
「Aはよく食べるもんね」
「そんなことないよ……？」
なんて会話をしながら、パンをつまみ目玉焼きをつまみスープをつまみ……とのんびりと食事を楽しむ。
時折シャルを見つめると、シャルもこちらを見て目が合い、どちらともなく笑い合う。
大好きな人と迎え、大好きな人と食べる食事は、とても嬉しくて今まで鉛のようにのしかかっていた不安が少しづつ取り除かれていく予感がした。
食事を終え、私は精一杯身嗜みを整える。シャルに少しでもつり合えるように。
一晩お世話になった部屋を後にし外へ出ると、真上に登った太陽が容赦なく私達を照らす。
せっかく流した汗はみるみる吹き出てくるけど、不思議と不快感はなく、私達はホテルを後にした。
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作者名：咲月 | 作成日時：2020年1月8日 0時
