触れ合いたい #4 ページ26
「伝わってないみたいだから、言葉にするね」
へらへらと笑っていたシャルが、急に真剣な顔付きになり私の目をしっかり見て話し出す。
「俺は名前を一人にしないよ、必ず。何があってもAと共に生きていく。約束するよ」
なんの根拠があってそんな軽はずみに約束なんて出来るのか。
「無責任な約束しないでよ」
「無責任？ ……分かってないな、俺がAを好きな気持ちは不可能を可能にする、ただそれだけだよ」
「な……っ」
「何度でも言うよ。俺はAのことが好きだ。だからAを一人にはしない。約束する」
「本当に？ 信じていいの？」
「あぁ、必ず守る。約束も、Aの心も」
そう言うとシャルはまたわたしを抱き締める。
「本当に信じていいの？」
「もちろん。でも、無理にとは言わないからさ、俺を信じれる様になったら、Aから教えてよ。それまで待ってるから」
「え……？」
一瞬時が止まり、目をぱちくりと開閉する。
「Aが俺のこと信じれるようになった時、その時からやっと俺たちは始まるんだよ」
「え？ じゃ、さっきのキスは……？」
「気持ちが抑えられなくて、ごめんね」
身体の力が抜けて、地面へ倒れ込みそうになるのをシャルが支えてくれる。
「も、なに、訳わかんない……」
「もういい時間だし、寝よう」
そう言って私を抱えベッドへと運んでくれる。数歩の距離なんだから、一人で歩けるのに……と思ったけど、それを伝える気力さえ無くしてしまった。
私をベッドへ寝かすと、シャルも隣のベッドへと入る。ふと頭に過ぎる言葉。気持ち。
言うか言わまいか迷った。シャルが“一人にしない”と言ってくれた言葉が嬉しくて舞い上がってしまう。
気持ちはどんどん大きくなり、わずか数十センチのこの距離でさえ、とてつもなく長い距離に感じてしまう。
そんな気持ちを、意を決して伝える。
「一緒に……寝ないの……？」
顔を横に向けシャルへ向けて問いかける。きっとシャルも笑ってこっちを見てくれるだろう、と期待して。
だけどシャルの態度は先程とは一変していた。
「襲ってもいいならそっちに行くよ。その覚悟があるなら、ね」
「……っ」
目を瞑ったまま、私の方など一切見ず、今まで聞いたことのない冷たい声でそう告げられ、その言葉を聞いた私は静かに涙を流していた。
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作者名：咲月 | 作成日時：2020年1月8日 0時
