After Story2-1 ページ39
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存在は知ってた。
こっちが全身痛くて、必死にリハビリしてるのに、
見た目はどこも悪くなさそうに、
なんかヘラヘラしながらリハビリの部屋におった、
同い年くらいの男。
正直、ムカついた。
お前みたいな元気な奴が来るとこちゃうねん、と。
「なぁなぁ! 自分何歳なん!」
1ヶ月半動かれへんくて、
動けるようになっても痛みと不自由さで、
動いた気しやんし。
イライラして、車椅子用のトイレで1人で金髪にした。
そんな俺やったのに、そのヘラヘラしたやつは、
平気な顔してニコニコと近づいてくるから、
それにもまた、腹が立ってしまって。
「…16。」
俺は、そっけない返事ばっかりしてしまってた。
心の中ではどこか嬉しかったのに。
たまに親が行き来するだけの寂しい生活に、
友達ができるかも、とかちょっと思ってたのに。
「うそやん! 俺も16!
めっちゃ嬉しい! 俺ら同い年やん!」
車椅子に乗る俺のために、
わざわざ目線を下げて、固く握手。
そのキラキラしたような笑顔が、
当時の俺にはうざくてうざくて、たまらんかった。
「俺、中間大毅! 自分は?」
「……かみやま、」
「かみやま? じゃあ…神ちゃんやな!
よろしくな! 神ちゃん!」
けど、そいつはリハビリにくるたびに、
明らかに、できへんことが増えていってるのが、
外から見てる俺でもわかった。
「じゃあ、次は右手と左足離してな?
あー、ぐらつく? まっすぐ、そうそう。できてるよ?」
はまちゃんっていう、
俺も大好きな理学療法士の人の声で気づく。
あれ、この前までは全然できてたやん、って。
知らん間にあいつのことが、
気になって仕方なくなってる自分がおった。
なんでリハビリに来てるんやろ?、
なんでリハビリやのにできへんことが増えてんのやろ?
って。
「…なぁ、なかま、」
これまでは、一方的に話しかけられるのに、
答えてるだけやったけど、
その日は始めて自分から話しかけてみた。
秋のちょうど真ん中ぐらい。
週一ぐらいにしかこなかったあいつも、
このころには3日に1回、リハビリにくるようになってた。
「おぅ! お疲れ!」
そして、その時に、
キラキラ輝く笑顔に隠された大きな病の存在を、
俺は初めて知ることとなる。
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のん(プロフ) - この作品大好きです。素敵な作品をありがとうございます。表現素晴らしいです。涙が止まりません。一瞬でファンになりました。 (2020年7月25日 2時) (レス) id: 56343318d5 (このIDを非表示/違反報告)
ごま - 声出して泣くくらい本当に号泣です。素敵な作品に出会えてよかったです!ありがとうございます。 (2020年5月10日 1時) (レス) id: d07563048d (このIDを非表示/違反報告)
いっちゃん(プロフ) - 初めまして!久々に小説で号泣しました。友人に勧めたくなるくらい素晴らしいお話に出逢いました。ありがとうございました。 (2020年5月6日 17時) (レス) id: a6f24fa91f (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - はじめまして、知り合いに勧められて一気に読みました。途中から涙が止まらなくて、親には心配されました笑多分何回もまた読みに来ると思います、最高の作品でした。作者さんの他の作品も読んでみますね。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: f84ebdac68 (このIDを非表示/違反報告)
たぁ(プロフ) - こんにちは。もう一度読みたくなってきちゃいました笑 ほんとにこの作品素晴らしいです>_< 何度涙を流したことか…最高の作品をありがとうございます。 (2020年5月4日 17時) (レス) id: 4b1a527b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉都香 x他1人 | 作成日時:2017年1月4日 18時